意味の変化

意味の変化

 言葉の意味は、数年、あるいは何十年もかかって変化することがある。

 身近な例が、流行語大賞に選ばれたこともある忖度(そんたく)。2016年に国が国有地を大幅値引き価格で森友学園に払い下げたことをきっかけに、「他人の気持ちを推し量る」という意味が「権力者の意向を察して便宜を図る」に変わった。今は下手に使うと、いらぬ誤解を生みかねない。

 今時期に使う「日差しが和らぐ」も一例かもしれない。記者が30年ほど前に買った紙の辞書と、今どきのオンライン辞書とでは、この文を使える季節が違うからだ。紙の辞書で「和らぐ」を引くと、「やわらかになる」の使用例に「日差しも和らぐ春先」とあり、春と秋に使えると解釈できる。ところが、オンライン辞書では、この文そのものの意味として「太陽からの光が弱くなること」と出ており、秋にしか使えない文ということになっている。意味がいつどうして変わったのは分からないが、春に使うのは誤用なのだ。

 今は言葉の意味は、紙の辞書よりスマホやパソコンで調べる時代。オンライン辞書の意味の方が世に浸透しているのなら、この辞書が示す意味を「紙の辞書とは違う」と否定するのは早計だろう。

 長年なじんだ意味が変わるのはふに落ちないが、今後どの言葉でも起こり得るし、長生きするほど遭遇する。言葉の意味は現状を受け入れ、適切に使っていくしかなさそうだ。(林)

関連記事

最新記事

ランキング

一覧を見る

紙面ビューワー

紙面ビューワー画面

レッドイーグルス

一覧を見る