標識

標識

 久しぶりに本棚から北海道新聞社「夏山ガイド」を取り出した。山名と数ページの記述を頭に詰め込み、未明に山へ出発した日々を思い出しながらの懐かしい再読だ。

 テレビに大雪山系の紅葉が映し出されていた。里は秋。高山では初冠雪ももう遠くない。

 先日の新聞に、高山植物の群落の上に棒状の岩を並べた「ニペの耳」と読める岩文字の写真を見た。改めて地図を調べた。東大雪のニペソツ山(2012メートル)一帯は自然公園法の特別保護地区。文字は幅1メートル、長さ5メートルほどの大きさ。8月下旬、十勝管内士幌町にある環境省大雪山国立公園管理事務所が登山者から連絡を受けて9月上旬に撤去したが、1週間後に別の置き石が確認された。インターネットの交流サイトには「目印になる」と肯定的な意見もあったが環境省は「違法の疑いがある」との立場。1年以下の懲役、または100万円以下の罰金が科される可能性があるそうだ。

 山には頂上標識のほか登山道や歩道の分岐、距離標識などいろいろな標識がある。グラグラの柱に付けられた、距離や方角の書かれたものもある。もし誤りがあれば人命にも関わる。

 幌尻岳(2053メートル)やペテカリ岳(1736メートル)に登らせてくれた静内山岳会の先輩が自然保護に関して教えてくれた言葉は実に簡潔だ。「来たときよりも美しく」。この言葉を守って約半世紀。登った山の岩にも植物にも、思い出して恥ずかしい乱暴は働いていない。(水)

関連記事

最新記事

ランキング

一覧を見る

紙面ビューワー

紙面ビューワー画面

レッドイーグルス

一覧を見る