妻の森下愛子さんはシングルマザーに育てられた。夫の吉田拓郎さんもそれに近い環境で育った。その母親たちが苦し
かったとか、悲しかったとか、一言も語らずに天国に旅立った。もし、彼女たちが生まれ替わって現代に若い女の子として出てきたら、こんな女の子で居てほしい。そんなイメージを拓郎さんの大ファンの女優、奈緒さんにお願いした。
拓郎さんのラストアルバムのアナログ盤のジャケットは、こうして完成した。撮影場所は拓郎ファンの聖地、静岡県の「つま恋」。デザインは、今や国際的デザイナーに飛躍した篠原ともえさんが担当した。青い空と白い雲がとても美しい。
1970年にアルバム「古い船をいま動かせるのは古い水夫じゃないだろう」でデビュー。日本で初めて大人数のスタッフ全員で移動する全国ツアーを敢行、各地にチケット団体も育った。前例がなかった野外オールナイトイベントも開催し、夏フェスの原型となった。75年にはフォーライフレコードを設立。社長も務めた後、一アーティストに戻り、ファンを熱狂させた。
ラストアルバムのタイトルは「ah―面白かった」。そのDVDで「皆さんにも愛がいっぱい、空から降ってきますように…」と最後のメッセージを送る。日本の音楽業界を変えたレジェンドが、年内で静かに活動に終止符を打つ。個人的には朝日が昇るまでのイベントに3度参加でき、幸せに思う。一つの時代が流れて、少し寂しい。(広)









