発射

発射

 朝刊を手にテレビのニュースを見ていると座っている椅子の前後左右から耳慣れない大音量の音が居間に鳴り響いた。テレビの画面は変わらず、音源が自分と家人の携帯電話と分かるまでに数秒かかった。「Jアラート」の警報音が鳴った瞬間のことだ。取りあえず2階に行っていた家人に声を掛けた。「何も分からない」

 4日朝、北朝鮮がミサイルとみられるものを発射した。ミサイルは北海道と東北の上空を通過、約4600キロを飛んで日本の東側の排他的経済水域の外に落下したと判断されている。

 きのう午後、日本の臨時国会が開会。夜にはヤクルトの村上宗隆選手がセ・リーグの今季最終戦で56本目の本塁打を放ち、三冠王の獲得を決めた翌日朝の出来事だ。ミサイル発射はこれらのニュースや定時番組を吹き飛ばし、とりわけ北海道、東北の住民を恐れおののかせた。

 警報の画面を何度も読み直すが意図は分かっても具体性がない。丈夫な建物は近くにない。地下鉄など頑丈な地下施設はない。唯一探せたのは「窓のない部屋、窓から離れた場所」だがトイレと風呂を家人と分け合えば避難準備はすぐ終わった。2月末にロシアのウクライナ侵攻が始まり、高層住宅や低層の民家の、ミサイルなどによる破壊を見続けたのに。もしこの場所にミサイルが着弾したら―。

 そんなことを考えながら木造2階建ての住宅街を見回した。政治は何を成したか。自分たちは何をできたかを考えた。(水)

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