「自分の体はがんにむしばまれているのではないか?」。そんな不安にとらわれた経験を持つ人は多いはずだ。厚生労働省の2021年の統計によると死因の1~5位はがん、心疾患、老衰、脳血管疾患、肺炎。がんは増加中だ。
定期的に健康診断を受ける人はともかく、自宅で体調を自分で確かめている世代は自分の経験や感覚が判断の基準。不健康を体内にため込む可能性が大きい。前兆現象の腹痛や便秘、発熱だって経験がないわけではなく、いつも何となく治まっているから検診や生活習慣の見直しにはつながりにくい。自分のことを言えば大ざっぱな性格は、性格通りの判断しかしない。
身の回りに、がんに敗れた人が何人もいる。兄弟、義父や義兄、友人や知人―。共通点は不具合への忍耐力がありすぎることが一つ。もう一つは病院や医師嫌い。「すぐに手術をしたがる」と医師と口論して、治療の機会を逃した血縁者もいる。
私事ながら、お医者さんの助言で「まさか」と思いつつも検査を受け、不具合が発見されて間もなく1年になる。即時の入院と手術、術後の長い投薬治療を一通り経験した。もし手術をしなかったら、今頃は転移が進んで痛みが出始める時期とか。健康は自分だけのものではないことを考える時間になった。
先延ばしにしていた検診の意義を何度も繰り返し考えた。祭壇の遺影に収まって家族や参列者の無念の表情を眺めずに済むよう、検診はお早めに。(水)









