地域ブランド

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 毎年、知人に「鵡川ししゃも」を送っている。胆振東部支局に駐在した20年前から続く。全国銘柄だけに魚好きの知人を大いに喜ばせる。

 ところが新物を予約するために鵡川漁協のホームページを見ると「2022年産ししゃも」がない。問い合わせると、不漁のため今季の販売は見通せないとの回答だった。物は町内の販売店で確保できるとしても独自の直売システムを持つ漁協が量を確保できない事態は異例だ。

 鵡川のシシャモにはアイヌ伝説が幾つかある。飢えに苦しむ川下のコタンを救うために神々が柳の葉にススハム(シシャモ)として命を与え鵡川に流した。あるいは、天の国の神聖な柳の木の葉が下界の鵡川に舞い落ち、それを見た神が「ただ朽ちるのは忍びない」と魚に化身させ永遠の命を与えたという。だから葉の散る秋にシシャモが天の国を恋しがって川を上り、里帰りするとの言い伝えもある。

 伝説の魚は2006年、地域団体商標として登録された。地域ブランドの先駆けだ。それが危機にひんしている。漁協は早くも漁を切り上げた。10月中なのも異例だ。遡上(そじょう)する親魚を少しでも多くし、将来の資源増につなげたい。

 シシャモ資源を守ることは生産者、加工業者、さらには地域そのものを守ることにつながっていく。研究機関の協力を仰いで対策を検討し、風前のともしびのブランドの再建を果たしてほしい。「鵡川ししゃも」のファンとして心から願う。(司)

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