露骨

露骨

 中国の習近平総書記(国家主席)の異例の3期目指導部が23日発足した。習氏は「68歳定年」の不文律を破り、地方勤務時代からの忠実な側近で最高指導部を固めた。副首相らエリート養成機関のトップ経験者を降格し、後継候補となる50代前半の若手を1人も最高指導部に入れなかった。3期目どころか4期目も視野に入れているとされるゆえんだ。

 これほど露骨な人事がまかり通ることに驚きを感じるが、人のことばかりは言えない。岸田文雄首相が内閣を改造したのは8月10日。安倍晋三元首相の銃撃事件をきっかけに、多数の自民党議員と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の接点が明らかになった。関係の深い閣僚を外すとともに、統一教会問題への強い姿勢を示すため、9月上旬とみられていた改造を前倒ししてまで断行した。

 ところが、留任した山際大志郎経済再生担当相に教団との新事実が次々と明らかになり、なんとか逃げ切ろうと土壇場まで粘ったが、結局、更迭せざるを得なかった。岸田首相が改造の理由に挙げた「政策断行内閣」は表向きで、本音は旧統一教会問題に幕引きを図りたかったためだろうに、傷口をさらに広げる結果となった。

 人事は難しい。ただ一つ言えるのは、組織のトップが自らの権力維持や保身のためだけに人事をしても、決して自分の望むように事は運ばないということだ。隣国にもあてはまるかどうかは分からないが。(吉)

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