老いた者同士が付き添い、支え合うのが「老々介護」。公的な介護の陰で、高齢化社会を支え合う高齢者の労苦や困難を自分たちはどれだけ理解できているだろうか。
悲惨さに言葉を失うような高齢者の事件が続いた。皮切りは上旬に神奈川県内で発生した事件だ。81歳の夫が79歳の妻を、車いすごと岸壁から海に突き落とし、殺人容疑で逮捕された。報道によれば夫婦は2人で暮らしていた。妻は足が不自由で、夫が40年以上介護していたそうだ。別居している長男が警察に通報して逮捕された。夫は容疑を認め「介護に疲れていた」と供述しているという。家族や周囲の支援は、行政や福祉は―。思いを巡らすが、むなしい。
私事ながら、高齢者の2人暮らしをしている。子どもが自立して、20年以上がすぎた。後期高齢者の看板が近づき、健康な老後が平等に支給されるものではないことが分かってきた。
自分と「老々」との距離を点検してみた。完治という状態の見えにくい病気ばかりを背負い込み、のむ薬が増えた。いわゆる老化現象も家族関係にひびを入れている。耳が少し遠くなり声が聞こえにくいから返事が遅れ、大きな声が出ないから会話にならず、思わぬいさかいの原因になる。高い所の電球交換や重い家具の移動を、訪れた子どもや若い友人に頼る―。もう十分に「老々」世界の住民だ。
まずは、これは自分で―と決めた、錠剤のプラスチック包装の”皮むき”に精を出す。(水)









