賀状

賀状

 喪中につき年頭のあいさつを失礼させていただきます―。年賀欠礼のはがきが届く季節。初雪の便りが珍しくなくなったと思ったら大雨の降る日も。これも異常気象。

 欠礼の原因となった家族などの死を簡潔に知らせるはがきを読み、見舞いとご無沙汰をわびる電話をかけ、近況を説明し合うことが多い。死者が旧交を温める時間を用意してくれる。メールの普及で年賀状の販売枚数が年々減っていても心の交流には捨て切れない役目が残る。

 若い頃、同じ町の支局に勤務した同業の記者の声を久し振りに聞いた。子どももほぼ同じ年齢で仕事から子育てまで、たくさんの教えを頂いた。もう70代中盤になったという。はがきの後半の余白には力強いペン字が2行。今年は母を送り、その直後に自分の悪性腫瘍の摘出手術を受けたとのこと。大忙しの一年だったようだ。術後には抗がん剤治療も受けたそうで、どうやら当方と同じ薬の副作用に苦労したらしい。甲高い声は昔のままで改めて元気を頂いた。ともすれば体調不良が話題の中心になりがちな年齢だが、仕事のことなども静かに話して電話を置いた。新型コロナ感染の第8波はどこまで広がるのか。先輩の住む、山脈の向こうも油断はできない。来年こそ互いに元気な賀状を発送したいものだ。

 ロシアのウクライナ侵攻、北朝鮮のミサイル発射、11月までに3人の大臣を更迭した岸田政権の混乱―。今は先の見えにくい争乱の日々が続いても。(水)

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