卒業

卒業

 流行には、服装など表面だけでなく意識や生活を根底から変えるものもある。洗濯機や冷蔵庫などの家電製品を「三種の神器(じんぎ)」と呼び競って購入したのは1950年代の末からだという。

 70年代に本格化したマイカーブームもその一つだろう。今はそのブームの第1期生の卒業の季節だ。自分もその一人。同期の多くは安全運転を続けているものの、ペダルを踏み誤るなど年齢が原因と思われる重大な事故が続き、高齢の運転者を見る目は厳しい。免許証返納の呼び掛けが強まり今年5月以降は一定の違反歴のある75歳以上には運転技能検査も行われている。道内では1245人が受験し、94・7%の合格率だという。

 福島市で19日、軽乗用車が歩道を暴走、歩いていた42歳の女性を死亡させる事故―と先日の報道。車は女性をはねた後も暴走を続けた。運転者は97歳の男性だった。報道では自宅で車庫入れに苦労する様子や、車にへこみが増えていくのが近所の人に目撃されていたという。97歳の後悔の大きさを想像する。

 年明けの雪の積もった朝に近所の門柱に衝突した。幸い歩行者はいなかったものの「もし」と考えると、今でも恐ろしい。ハンドルを握らなくなって間もなく1年。不便や行動の制約の大きさに「判断を早まったのでは」と考えることがある。特に雨や風の強い日は気がめいる。しかし、衝突の衝撃や、衝突後も高速で回り続けるエンジンの音は、記憶から消えない。(水)

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