1990年代後半、行政機関の情報公開が盛んに議論された。99年公布、2001年施行の情報公開法につながる。
当時出席した行政の会議で「情報を受け取る住民はアンテナの高さと感度が違う。情報操作は論外だが、情報は適切なタイミングで整理して公開する必要がある」と意見した。一方で「税金で集めた情報は、そのまま原則全面公開になる」と反発する意見もあり、議論の整理が難しかった。
緊急地震速報や弾道ミサイル攻撃などの緊急情報を伝えるJアラート(全国瞬時警報システム)。恐怖で家から出ない人もいれば、まったく気にしないで行動する人もいる。どちらが正解か分からないもどかしさ。
01年ごろ、BSE(牛海綿状脳症)の問題が起きた。牛肉も危険部位以外は安全とされ、取材先に「安全性を報道したい」と伝えると「本当に安全だと思うなら、記事にしないでほしい。あなた方が安全と書けば書くほど消費者は牛から離れる」と言われた。消費者心理は「安全なのは理解できる。でも騒ぎの今はやめておこう」になるという。情報を受け取る側の解釈は、発信者と違ったものになることもある―。納得はできないが、理屈は分かると思った。
正確な情報と報道は全て正義となり得るか―。情報のプロなら、そこまで考えて報道したい。「あおる」と分かっていても、伝えなければならないニュースもある。自問自答の繰り返し。(高)









