警戒

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 オソ18(じゅうはち)。釧路管内標茶町と厚岸町内で2019年から3年間に放牧中のウシ65頭を殺したとみられる雄のヒグマの通称だ。ハンターと町が特別対策班を編成して追っている。クマと人間の知恵比べに注目が集まる。

 オソは一帯を流れる「オソベツ」川の名。18はクマの体格を推測する根拠となる足幅。オソ18は足幅の大きさ、被害の多さに加えて、わなに掛からない用心深さ、人を避けて行動するため目撃情報が極めて少なく無人カメラに写ることも少ない―などの特徴があり、報道に際しては、忍者グマ、化け物、怪物の別名で呼ばれることが多い。

 先日放送されたNHKスペシャル「OSO18―ある怪物ヒグマの正体―」によると、一帯に「熊の沢」と呼ばれる沢が5カ所もあり、開拓入植者とヒグマの濃密な関わりが長く続いてきたことが分かる。オソ18には用心深さ以外にも殺したウシを食べたり食べなかったりという不思議な行動も多い。最新の足跡の測定では足幅は16センチ。「体重300キロの巨大ヒグマ」は人の想像の産物の可能性もある。

 熊の沢は苫小牧にもあることを思い出した。20年ほど前の冬晴れの朝、歩くスキーを履いて出掛けた。錦多峰川の西側の林道に入り、緩やかな斜面を下って行くと谷の底に古い木橋の残る一角があった。帰宅後に開いた地図の「熊の沢川」の文字にゾっとした。下調べもせずに山奥に入る警戒心のなさ。思えば自分はオソ18以下なのだ。(水)

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