サッカー観戦にはビールが似合う。ウイスキーでは重すぎるし、ワインでは軽すぎる。欧州の人たちがビールを愛する理由がよく分かる。ロースコアで胃の痛くなるようなゲームの興奮を冷ますには、ちょうどいいのかもしれない。
日本代表監督を務めた名将、イビチャ・オシムさん(故人)はPK戦を「くじ引きみたいなもの」と好きではなかった。英国の名優ショーン・コネリーは「フットボーラーズ、ロシアンルーレット」と言ったそうだ。もともとは再試合、もしくは抽選に代わる勝者の決定方法として、ワールドカップ(W杯)では1982年のスペイン大会で初めて行われたという。以来、「PK戦は運」。こうサッカー界では定説のように言われた。
カタール大会は堅守のモロッコがアフリカ勢として初の4強入り。不屈の魂のクロアチアも脅威の粘りで延長後半で追い付き、日本戦に続き、強国・ブラジルもあのPK戦で破るジャイアントキリング、大番狂わせを演じた。GK・リバコビッチの神懸かり的なセーブが続く。
そして森保ジャパン。4度目の挑戦の8強入りこそ果たせなかったものの、世界を驚かせた。過去のW杯優勝国二つを倒し、下馬評を覆す快進撃。最後は苦手なPK戦で散ったが、「三笘の1ミリ」をはじめ執念の逆転劇は日本人の心を打った。終戦後、森保監督は「PKは運と訓練」と表現した。世界のベスト8という「新しい景色」を見る4年間の旅が、また始まる。(広)









