心奥

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 「守られるべき弱者」とされているはずの人たちが、語られる言葉とかけ離れて、真っ向から存在を否定されるような出来事が全国で相次いでいる。どうしてなのか。

 静岡県裾野市の私立保育園で園児の足を持ってぶら下げる、カッターの刃で脅すなどの虐待をしたとして女性保育士3人が4日、逮捕された。5日にはオホーツク管内西興部村で、障害者施設の入所者の虐待が判明した。同じ法人の運営する特別養護老人ホームでは昨春、入所者80人全員の全裸や下着姿の写真を撮影したことが15日、報道された。白老町でも7日、町立介護老人保健施設の入所者虐待が判明したとして発表された―。偶然もあるにせよ弱者への虐待の重なりに驚かされる。厚労省や道が調査の検討を始めた。

 裾野市で逮捕された3人は30歳、38歳、39歳。顔写真が報道された。赤鬼や青鬼の形相はしていない。年齢から考えれば家庭には「優しい母」の顔もあるかもしれない。顔の半分をマスクで覆った保育士の凶暴は1歳児に、どれほど怖かったか。

 低賃金や保育士の定数の不足など事件の背景として幼児教育職場の問題を指摘する報道も多い。新型コロナ対策で業務が増えストレスがあったと動機を説明する保育士もいるそうだ。しかし、これらの事情と、1歳児に行った行為が、心の中ですっきりと結び付く訳ではない。

 学んだ理念と行動が、なぜ大きく食い違ってしまうのか。自分の心の隅々を点検する。(水)

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