モンスター

モンスター

 もうすごいとしか言いようがない。別格だ。ただその強さに憧れる。

 プロボクシングバンタム級の井上尚弥選手が13日に行われた世界タイトルマッチで、イギリスの技巧派ポール・バトラー選手に11ラウンドノックアウト勝ちし4団体王座統一を果たした。ステップインが鋭く、足でパンチを打っているような印象。徹底して守る相手を誘うようにサウスポースタイルにスイッチしたり、ガードを外したりと見どころ満載の試合だった。何より驚かされたのは、終盤の11ラウンドでギアを上げられるスタミナ。現時点では誰かに倒される姿を全く想像できない。

 井上選手は、勝利をデザインすることを作業という言葉で表現する。「KOパンチを当てる前に相手をいかに弱らせるかの作業」。打たさずに打つ。そんな29歳も最初からすべてが出来上がった天才ではなかった。

 小学生の頃から父や弟と質の高い練習を積み上げてきた。それでもアマチュア時代は6敗し、五輪には出場できなかった。けがやスランプもあった。挫折は人を強くする。「プレッシャーは好物だが、自信を過信に変えてはならない」と慢心はない。

 強豪ひしめくスーパーバンタム級への転向を見据えるモンスターは、まだ底を見せていない。あしたのジョーの矢吹丈もバンタム級だが「漫画超え実写」との声も上がる。サッカーワールドカップは面白いが、ボクシングの世界戦も相当熱い。(輝)

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