最大の夢をかなえた。何よりも欲しかったW杯の優勝トロフィー。アルゼンチンのメッシは少年のような笑顔で手をこすり合わせ、受け取るとキス。「待ち望んでいたものがここにある。美しい」。大事そうになでながら仲間の元へ。雄たけびを上げ、高々と掲げた。
王者フランスとの決勝は、歴史に残る死闘となった。3―3の激しい打ち合いからPK戦へ。メッシは後蹴りの1番手。先にエムバペが決めて重圧がかかる中、冷静に左へ流し込んだ。相手は2、3番手が失敗。アルゼンチンは4人続けて成功し、栄冠をつかんだ。
その瞬間、8万8966人で埋め尽くされた観客席から、地鳴りのような大歓声。メッシはその場に膝をつき、両手を大きく広げた。センターサークルに歓喜の輪ができる。自身最後と位置付けた5度目のW杯。輝かしい経歴で唯一足りなかった悲願を達成し、最高のフィナーレを迎えた。
エースは力強くけん引した。前半23分のPK。蹴る直前にスピードを緩めてGKの動きを見極め、逆をついて右へ先制ゴール。2―2の延長後半3分は、味方のシュートのこぼれ球に即座に反応。レフティーは右足でボレーを押し込んだ。
土壇場で同点にされても信じていた。「神様は(優勝を)与えてくれると思った。こうなる予感がした」。決勝トーナメント1回戦から決勝まで4戦連続ゴール。全7試合にフル出場して7得点3アシストと輝きを放ち、史上初となる2度目の大会MVPに選ばれた。
母国が前回制した1986年大会は、2年前に死去した英雄マラドーナさんが活躍し、「マラドーナのための大会」と呼ばれた。36年後。同じ10番を背負った「神の子」は、魔法のようなプレーで次々と得点を生み出し、トロフィーを奪還した。「メッシのための大会」が華々しく幕を閉じた。

















