札幌冬季五輪の開かれた1972年のことを思い出す。50年前、今頃はテレビやラジオから、終日「町ができる 美しい町が」という壮大な歌詞の曲が流れ開幕まで秒読みの五輪を盛り上げていた。
スポーツの祭典の五輪と、鍛え上げた競技者らの力と技、都市の基盤整備と観光や商業の振興がごちゃ混ぜになった雰囲気に開催都市・札幌市だけでなく北海道全体が浮き足立っていた―そんな時代だったと思う。
札幌市は2030年の冬季五輪とパラリンピックの招致活動を長く続けてきた。しかし、ここにきて招致の行方に暗雲が立ち込めている。皮切りは20年東京五輪の元組織委員会幹部の収賄による逮捕。贈収賄双方に逮捕が相次いだ。先に開かれた第1回公判では贈賄側の被告が犯行を認めた。一連の流れを受けて札幌市は「五輪招致機運醸成の休止」方針と、改めて全国で誘致の意向調査を行うことを発表した。市は今年3月に郵送による市民意向調査を実施。賛成52%、反対38%の回答を得ていた。次の調査の結果が仮に反対多数なら―。市長は会見で「誘致を、そのまま進められない」との基本姿勢を示している。
入社した時、職場には胸に社名の入ったベージュ色の厚手のコートが何着かあった。アイスホッケーなど氷都・苫小牧ゆかりの競技を取材する記者たちの晴れ着だった。自分に着る機会はなかったが別の取材で何度か袖を通した。暖かかった。改めて考える。五輪って何だ。(水)









