苫小牧市新富町の小野三蔵さん(92)が1990年代に手掛けた小説「浜町物語」が電子書籍化され、1月下旬からインターネット通販大手アマゾンのサイトで販売されている。昭和時代をたくましく生きた市内浜町の漁場のおかみトラの生きざまを描いた作品で、タイトルは「昭和・トラの海」に一新した。小野さんは「フィクションだが苫小牧の地名や商店、寺院の実名を使った。電子書籍化を機に多くの人に読んでもらえれば」と話す。
子どもに恵まれない漁師寅吉、ウメ夫婦の養子となったトラが2度の結婚や出産を経て漁業協同組合の理事長になるまでを描いた大作。敗戦や娘、夫の死など数々の悲劇、困難を乗り越えながら生きる女性の一代記で、95年に上巻、97年に下巻が発刊された。
45年7月の米軍による苫小牧空襲も盛り込み、小野さんは「激動の時代だった昭和を描いた」と語る。2004年には、第7回日本自費出版文化賞を受賞した。
20年以上前の小説が再び日の目を見ることになったのは電子書籍の流通、出版を手掛ける22世紀アート(東京)の社員が国立国会図書館(同)に収蔵されている同作品をたまたま読み、心を動かされたことがきっかけ。昨年5月に電子書籍化を提案された小野さんは再出版に当たり、昭和の話であることを強調したい―とタイトルの変更を申し入れ、表紙も夕日や海などで昭和を連想させるデザインにリニューアルした。
小野さんが執筆活動を始めたのは、警察官だった23歳の時。道警の広報誌「北海警友」での小説連載を機に熱中していった。1985年の「黒い土」を皮切りに、2010年の「晩節の罠」まで25年間に計8冊の小説、随筆集を自費出版した。浜町物語は3作品目に当たる。
「昭和・トラの海」は上下巻セット1250円で、1月25日にアマゾンから電子書籍版のみ発売。早速、購読者から「トラと同じ昭和初期の生まれなので共感できた」といった感想が寄せられているといい、小野さんは「反応を見た上、今後(2003年出版の東京や大阪などを舞台にした)『斑(まだら)が吼える』など他の小説も電子化できれば」と語る。
















