苫小牧市大成町の元タクシー運転手、安川淳一さん(76)は昨年5月11日の朝、支笏湖で息をのむ絶景に出くわした。
べたなぎの湖面に周囲の山々や青い空などが上下対称に映り込む自然の美があった。毎年、新緑や紅葉の時期に来ていた湖畔だが、初めての体験だった。
今年2月23日付の本紙記事で、あの光景が鏡面現象と知ったという。その記事は私が書いた。公立千歳科学技術大学の学生が支笏湖の鏡面現象を観光資源にと考え、現象の発生予測研究に挑戦する様子を紹介した。
安川さんは絶景に出合う約1カ月前、20年続けたタクシー運転手を引退。運転免許証の返納も決め、60年近くの車生活を終える前、妻との最後のドライブ旅行中だった。
そんな時、幾つもの気象条件がそろわないと見られない現象に遭遇でき「人生の中のご褒美だった」としみじみと振り返った。こうした褒美に私も出合えるよう、日々の生活を真摯(しんし)に過ごしたいと思った。(河)









