知床半島沖で死者・行方不明者26人を出した観光船「KAZU 1(カズワン)」の沈没事故は、23日で発生から1年となった。運航会社「知床遊覧船」(オホーツク管内斜里町)は事故後、ずさんな安全対策や法令違反が次々と発覚。海上保安庁は、悪天候が予想される中で出航を判断したとして、業務上過失致死容疑などで同社の桂田精一社長(59)の捜査を続けている。
事故は昨年4月23日午後に発生。カズワンは同日午前、斜里町のウトロ港を出航後、知床岬で折り返して帰港する約3時間のコースを予定していたが、午後2時ごろの連絡を最後に消息を絶った。船体は岬南西の「カシュニの滝」付近の海底で発見。これまでに乗客乗員計20人の死亡が確認され、現在も乗客6人の行方が分かっていない。
事故当日、現場付近には強風や波浪注意報が出され、地元の漁船は出航を取りやめていた。しかし、桂田社長らは海が荒れたら引き返す「条件付き運航」で出航を決めていた。斉藤鉄夫国土交通相はこの運用を「あり得ない」と批判。海保は出航判断に過失があった疑いがあるとして、社長の立件も視野に捜査している。
また、会社事務所の無線アンテナが破損し、カズワンと直接交信できる状況ではなかったことも判明。同社は船長の携帯電話を陸上との通信手段として国に申請していたが、事故現場付近では圏外だったとみられ、海保への通報も乗客の携帯電話を借りて行われていた。
海上運送法施行規則は、運航管理者の要件を「実務経験が3年以上」と定めているが、同社は経験がない桂田社長を管理者に選任し、要件を満たしていると国に虚偽申請していた。運航管理者は船舶の航行中、事務所にいて船長と定期的に連絡を取る必要もあったが、桂田社長は事故当時事務所を不在にしていた。国交省は昨年6月、これらの違反を理由に同社の事業許可を取り消した。
知床観光船事故を巡る動き
【2022年】
4月23日午前10時 カズワンが乗客乗員26人を乗せて出航
午後2時ごろ カズワンから「船首が30度ほど傾いている」と連絡。その後
消息を絶つ
午後4時半ごろ 海保が現場海域で捜索救助活動を開始
24日 海保などが乗客11人を発見、その後死亡を確認
国土交通省が知床遊覧船を特別監査
28日 海上自衛隊などが乗客3人を発見、死亡を確認
29日 「カシュニの滝」付近の海底でカズワンの船体が見つかる
5月2、3日 海保が業務上過失致死容疑で知床遊覧船の事務所など捜索
6月1日 船体を網走港に陸揚げ
16日 知床遊覧船の事業許可を取り消し
9月10日 サハリンや国後島で発見された乗客2人と甲板員の遺体が小
樽港に到着
12月15日 運輸安全委員会が、船前方のハッチと窓から浸水し沈没した
可能性が高いとする調査経過報告書を公表
【2023年】
4月4日 国交省が小型旅客船に「水密隔壁」の設置義務付けを発表
















