シイタケとバトン 加藤(かとう) 千昇(ちしょう)

シイタケとバトン
加藤(かとう) 千昇(ちしょう)

 6月の夏日、よりみち学舎の生徒たちと厚真町内に住む堀田祐美子さんのシイタケ農園のお手伝いに参加させていただいた。原木シイタケの栽培はおよそ半年をかけて、さまざまな工程を経て行われるという。その日はビニールハウス内に組まれたミズナラの原木、およそ1万本の上下左右をひっくり返す「天地返し」を行う。原木の全体に菌を行き渡らせるための作業だ。重いもので7キロ以上もある木を持ち上げようとすると、思わずバランスを崩しそうになる。

 堀田さんの農園には、日々いろいろな人が訪れる。大学生から社会人、時には旅人も。休憩中においしいそうめんをみんなでごちそうになったり、堀田さんが原木の隙間に隠したカードをみんなで宝探しみたいに探したり、その過程を共に楽しんでいる。そこに、何気ない日々の小さな気付きや、人と自然の関わり合いの中で生まれる温度を持った時間を大切にしている、堀田さんの思いが感じられる。

 栽培に至るまで、さまざまな工程を経ている原木は、まるでリレーのバトン。長い時間をかけて、いろいろな人の手や思いの中でつながれていく。徹底的な環境の管理と地道な力仕事によってじっくり育てられながらも、最後はふとした刺激をきっかけに、シイタケはぽんっと生まれてくるという。きっと人間だっていろんな経験を積みながら、ちょっとしたことをきっかけに自分の成長や変化を見つけられるのだろうと思う。人から何かを受け取ったり、人に何かを手渡したり。今の自分は何だか少し原木の気持ち。

(厚真町地域おこし協力隊)

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