日本のロックの草創期を駆け抜けた伝説のバンド、はっぴいえんどの名盤「風街ろまん」に収められた「夏なんです」という曲がある。松本隆さんが詞を書き、細野晴臣さんが作曲した。こんな詞だ。〈ギンギンギラギラの夏なんです…〉。この暑い季節に、いつも思い出す歌だ。
そんな寝苦しい夜に作家、鈴木忠平さんが書いた傑作ノンフィクション「アンビシャス」(文芸春秋)を読んだ。今春開業した北海道ボールパーク(BP)誕生までの裏舞台を克明に追っている。
なぜ、日本ハムファイターズは、あらゆる機能を備えた大都市・札幌ではなく、人口6万人にも満たない地方都市・北広島を選んだのか。札幌では新しいBPを望む者と、望まない者がいた。真駒内公園など3カ所の建設候補地は敷地面積が足りなかったり、複雑な地権者や一部地域住民の反対の声が最後まで消えなかった。球団がBPに求めていたのは拡張性。既に整備された基盤ではなく、広大で自由なキャンパスだったことが分かる。
開業から間もなく4カ月。新庄ファイターズは悪戦苦闘しているが、希望も見える。連日、大勢の観客が詰め掛けている。北の大地に誕生した日本初のBP。球団や関係者が大志を込めた素晴らしい施設だと思う。大切に育てたい。(広)









