若林さんの面影

若林さんの面影

 1990年代に日本アイスホッケーリーグ・プレーオフ取材のため、東京の高田馬場駅から西武新宿線に乗って試合会場のアリーナがある東伏見駅に向かった。昼下がりですいていた車内に当時の国土計画監督、若林仁さんがいるのが分かった。ライバル王子製紙との大勝負前、日系カナダ人監督が英字の本一冊を手に一人静かに読書していた姿が印象深い。若林さんは今月9日、80歳で死去した。

 西武鉄道、さらに国土計画FWとして活躍の後、国土監督を務めた。70年代の選手時代はホッケー少年に人気があり、小職も客席での観戦に加えて、よく行われたテレビの試合中継、新聞、専門誌による「メル若林さん」の動向記事に注目した。90年から制度が始まった日本リーグのプレーオフでは初回優勝の王子製紙と毎年激闘を繰り広げた。翌年、苫小牧会場で王子に2連勝で王手をかけた日、尋ねると若林さんは「選手には去年(準優勝)の悔しさがありますよ」と雪辱を予告し、次の試合で優勝をもぎ取った。

 王子番記者ながら若林さんの指揮には重要局面での選手起用の妙手を確かめ、試合後は勝敗によらず誠実に質問に答える人柄には感謝した。晩年は男女代表強化に尽力。アイスホッケー界で日本と北米をつないだ偉人の一人だった。(谷)

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