夢色くじらの海を見て 加藤(かとう)千昇(ちしょう)

夢色くじらの海を見て
加藤(かとう)千昇(ちしょう)

 厚真町の厚南デイケアセンターで開かれたパステルアート教室に、小中学生たちが集まった。子どもたちと高齢者の世代を超えた友達づくりを目指したワークショップで、僕もボランティアスタッフとして参加した。

 夏休み中の子どもたちの表情には独特な輝きがある。こちらが聞くよりも早く「もう宿題終わったよ」と伝えてくるはずむ声と表情が、その日の曇り空を明るく照らしたようだった。高齢者の方も徐々に集まってきた。

 今回描くのは「夢色くじら」。講師として苫小牧市からいらっしゃった「よっちゃん」こと三浦芳裕さんは、普段は読み聞かせを行っている。パステルの扱い方を一通り教えてくださった後、「空も海もクジラもいろんな色で描いていいんだよ」とカラフルなクジラの絵を見せる。僕の隣に座っていた子どもが早速パステルを見詰めて、どんな色にしようか悩み始める。

 削ったパステルのふわりとした色合いを指でなぞって少しずつ紙になじませていく。波と海とクジラ、彩りのバランスをイメージしながら一つ、また一つと色が重なると、そこに生まれた新しい色が作品の世界をどんどん広げていく。どんどん作品にのめり込んでいく子どもたちが、時々顔を上げて他の人の作品を見てみると、そこには全く違う世界がある。

 「いいね」「すごい」とたたえ合うごとにその場全体の空気が柔らかくなっていき、子どもたち同士だけでなく高齢者の方と子どもの間にも、自然と対話が生まれていった。同じだったら気付くことすらできない互いの素晴らしさは、「違い」の中で輝いていた。額縁に並んだ夢色くじらが泳ぐそれぞれの海を見て、そんなことを考えていた。

(厚真町地域おこし協力隊)

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