2月24日の夜。新工場の開業準備でサウジアラビアを訪問していた私たちは、事業パートナーのアルサエダン家が保有するリヤド郊外の別荘に招待された。
そこは砂漠の岩山の峰を借景にした、アラビアンナイトを思わせるファームを併設する大宮殿。食事のあと中庭に出ると、ナツメヤシ越しに、ま~んまるいお月様が岩山の稜線から顔を出した。「三笠の山に出でし月」とは、またひと味違う、フルムーンの美しさだ。
「月の表面をよく見て。ウサギが餅をついているの、わかるかな~」
月明かりの静寂のなかで、ゆったりとアラビックコーヒーを飲みながら、夜遅くまで談笑は続いた。さすがヒジュラ歴(陰暦)のお国柄。月をめでる感覚は、わが国のそれと寸分変わらない。
その数日後、飛び込んで来たニュースに言い知れぬ嫌悪を覚えた。ロシアがチャイナと組んで、月に原子力発電所を設置する、という。ロイター電によると2033年から35年を想定。月面居住施設の実現につなげるらしいが、平和の月に”汚点”を残すだけ、と心からの反対を表明したい。
昨年12月、初めて東京電力福島第1原発の構内に足を踏み入れる機会を得た。水素爆発で建屋が吹き飛んだ1号機の前に近づくと、13年たった今でもガイガーカウンターがピーピー鳴る。東電のスタッフの詳しい説明のおかげで、廃炉までの途方もない道のりを理解した。と同時に、原発の再稼働はやはりあり得ない、と確信するに至った。ぐにゃぐにゃに壊れた目の前の原発が、どうしてもミサイル攻撃を受けた跡にしか見えなかったからだ。
人類は残念ながら技術的にも倫理的にも自らがつくった原子力を制御できない。ウクライナに戦争を仕掛けたロシアにいたっては、あろうことかザポリージャ原発をもてあそぶ始末だ。わが国に向けて火遊びを続ける北朝鮮が、たった一発、稼働中の原発の「管理棟」をミサイル攻撃するだけで福島型のカタストロフィーは再発してしまう。原子力規制委員会がいくら活断層を巡る安全性の議論を重ねても、安全保障の現実の前には無力というほかない。
米MITスローン校の教授らが開発した気候変動シミュレーター「En―ROADS」を使うと、原発と再生可能エネルギーの不思議な関係が明らかとなる。原発を稼働させればさせるほど再生可能エネルギーの普及が遅れ、地球の平均気温上昇の抑制に逆効果になるというのだ。二兎は追うな、浮体式洋上風力の世界を切り開け、とマクロモデルは伝えているようだ。
弊社が、コンクリート製メガ浮体の量産モデル開発を急いでいることは前に触れた。4月11日、福島RDMセンター(浪江町)で、テックイベント2024『結』を開催するが、今年のテーマは「テクノロジーと生存戦略」。にわかに不透明感が増す「エネルギー」と「食」と「安全保障」の在り方を、浮体という21世紀の海洋インフラを通じてデザインする。
「ほぼトラ」で日米安保の先も見通せなくなった。国の自存自立は、私たち自身が描くしかない。
(會澤高圧コンクリート社長)
















