フェンシングは28日、個人戦が行われ、男子エペの加納虹輝(JAL)が金メダルに輝いた。フェンシング個人では日本勢初の金で、表彰台は2008年北京五輪男子フルーレで銀の太田雄貴以来2人目。エペ個人では初のメダルとなった。
加納は決勝でヤニク・ボレル(フランス)を15―9で破った。山田優(山一商事)は準々決勝で、見延和靖(ネクサス)は3回戦でいずれもボレルに敗れた。
女子フルーレの東晟良(共同カイテック)、上野優佳(エア・ウォーター)、宮脇花綸(三菱電機)はいずれも初戦の2回戦で敗退した。リー・キーファー(米国)が連覇を果たした。
地元フランスのボレルとの決勝。相手に得点が入るたびに大歓声が響き渡り、客席では青、白、赤の旗が揺れる。そんな完全アウェーの環境でも動じない、確固たる自信が加納を金メダルへと導いた。
ぐいぐいと前に出てくる相手の圧力を受け流すように、素早いカウンターで得点を重ねていく。「日本チーム3人目が負けるわけにはいかないぞ、と思っていた」。3回戦で見延、準々決勝で山田を破ったボレルに、一度もリードを許さない快勝劇。熱狂的な応援を沈黙させ、最後にはスタンディングオベーションで祝福を受けた。
大会前、報道陣の取材に応じるたびに「今が一番実力がある。個人も団体も金メダルを取る」と口にしていた。団体金メダルを獲得した東京五輪後、個人でも国際大会で実績を積み上げ、昨年5月には世界ランキング1位に。「どの選手に対しても『100%負ける』と思うことがない。自信がある方が実力を発揮できるし、堂々とプレーすることで緊張と無縁になる」
時に変わり者と称されるほどに芯の強い性格。そこに実績と経験が加われば、五輪でも怖いものはなかった。「歓声に圧倒されることはなかった」とけろり。有言実行で目標の半分を達成し、「口に出して言った方がいいなと、改めて感じた」と笑った。
「終わった瞬間から団体のことを考えている。きょうで個人のことは忘れる」。日本フェンシング界初の個人での金メダルという快挙も、本人にとってはまだ道半ば。団体連覇という、もう一つの栄冠を仲間と分かち合うまで戦い抜く。

















