アーバンスポーツなどで10代の若者の活躍が目立ったパリ五輪では、長く日本を支えてきたベテランの存在も大きかった。4年に1度の大舞台では、そこで酸いも甘いも味わった者にしか伝えられないことがある。
サッカー女子の日本(なでしこジャパン)では、準優勝した2012年ロンドン五輪を知る33歳のDF熊谷紗希(ローマ、札幌出身)が奮闘した。フィジカル面は全盛期に及ばないものの、故障者が続いたチームの精神的支柱として君臨。「若い子たちがどんどん成長して、なでしこを強くしていってほしい」。ピッチでは背中でその思いを示した。
カヌー・スラローム男子の羽根田卓也(ミキハウス)は5度目の出場となった。カヌー界の発展を願う37歳は「自分が戦ってきた経験を伝えたい」。自身が敗退してからも若手のサポートに努め、コースの攻略法や心構えを熱心にアドバイスした様子が印象的だった。
最年長でも20代前半だった卓球の日本勢は将来性が豊かだ。前回東京大会で男女の大黒柱だった水谷隼、石川佳純は現役を引退。初出場した女子の早田ひな(日本生命)はその魂も引き継いだ。「アスリートは強いだけが全てではない」。大会中のけがにも心は折れず、エースとして戦い抜く姿を示した。
4年後のロサンゼルス五輪では、また新しい力が台頭してくる。先人の志や知恵は、次のヒーローやヒロインに引き継がれていくだろう。

















