さいとう楽器、来月末で閉店 65年の歴史に幕 苫小牧

閉店告知のポスターを手に店の前に立つ斎藤典子社長。「思い出がいっぱい」と語る

 苫小牧市春日町のさいとう楽器(斎藤典子社長)が10月末で、65年の歴史に幕を閉じる。1階の楽器店に加え長年、ライブ会場として親しまれてきた2階の「サウンドスペース音楽館」も姿を消すことになり、なじみの客からは「寂しくなる」と、惜しむ声が上がる。

 さいとう楽器は、前社長で夫の故・清司さんの祖父清助さんが1928年、錦町で開業したさいとう時計店が前身。59年6月、清司さんの父周一さんが表町3の苫小牧駅前通に楽器も扱う「さいとう時計楽器店」として開店した。

 斎藤社長(70)は「開店した頃は、音楽教室やフォークソングブームも重なりとてもにぎやかな時代だった」と回顧。高度成長期真っただ中で楽器も飛ぶように売れ、ピーク時は10人ほど従業員がいたという。

 斎藤さん夫婦は当時、東京の楽器店に勤務していたが78年、JR苫小牧駅北口にイトーヨーカドー苫小牧店(2010年閉店)がオープンするタイミングで帰苫。2代目社長新木寬二さんの下、イトーヨーカドーにレコード店も出店した。斎藤社長は「音楽教室や子育てに、忙しい日々だったが充実していた」と懐かしむ。

 01年、周一さん、新木さんが相次ぎ死去し清司さんが3代目社長に就いたが「当時はお店を守ることで必死だった」と振り返る。「全部はできなくてもいい、一番大事なことをやれ」が清司さんの口癖だったという。

 バンド好きだった清司さんは00年、春日町の自宅隣にライブハウスを開設。03年6月には建物を改装し、表町の店舗も移転、集約した。

 2階のサウンドスペース「音楽館」は、アジアン・カンフー・ジェネレーション、MONGOL800といった有名ミュージシャンや地元のアマチュアバンドのライブ会場に利用されるなど長年、市民に愛されてきた。

 そんな中、11年1月に清司さんが急死。斎藤社長が急きょ4代目として事業を引き継ぎ、スタッフ2人と楽器販売、音楽教室、音楽館運営を手掛けてきた。少子高齢化やネット通販の普及などで楽器、音楽機材の売り上げが低迷。コロナ禍でライブイベントも減り、事業存続は岐路に立たされた。

 昨年8月には、最後のスタッフ1人が退職。斎藤社長1人で店と音楽教室を切り盛りしてきたが「後継者問題もある中、古希(こき)を迎え、利益が生まれない状態での経営を断念した」と打ち明ける。

 斎藤社長は「たくさんの楽しい思い出を残してくれた場所。ここがあったから健康でいられた」と笑顔。長年支えてくれた市民などへの感謝の気持ちを込め、今月末まで在庫一掃セールを開催している。

 楽器店とサウンドスペース音楽館の営業は10月末で終えるが個人向けスタジオレンタルやピアノ、ギター、ドラム、マリンバの音楽教室は、隣接する自宅1階の「さいとう楽器スタジオ」で継続する。

 市文化団体協議会の事務局長で、小中学生らの吹奏楽演奏を指導する日新町の松原敏行さん(68)は「中学生の頃はさいとう楽器でクラシックのレコードを買ったし、ショーウインドーの楽器をよく眺めていた」と回顧。「このまちに古くからあった楽器店がなくなることは残念」と語る。

 閉店後の建物はすでに売却が決まっており、来年3月に美容室とサロンが一体になったコミュニティースペースとして生まれ変わる予定だ。

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