厚真町土地改良区と厚真町、室蘭開発建設部は、2018年9月の胆振東部地震で被災した農業水利施設に、先進的な復旧事業を6年間という短期間で行ったことが評価され、公益社団法人農業農村工学会(東京)から「上野賞」を授与された。道内での受賞は6年ぶり8回目。胆振管内では初めての快挙となった。
同賞は農業土木学の創始者上野英三郎氏の名を冠し、1970年に創設された。農業農村に関する事業の新しい分野の発展に寄与した組織や団体に贈られている。同改良区など3者は、2018~23年度に行った直轄災害復旧事業「勇払東部地区」の早期復旧の取り組みで受賞した。
胆振東部地震では、農業用水などを供給する厚真ダム周辺ののり面が崩壊し、大雨など緊急時に使う放流設備の洪水吐(こうずいばき)や取水放流施設などが損壊した。同ダムと同じ町幌別地区にあり、厚幌ダムを水源とする厚幌導水路などの用水路はパイプラインが離脱や沈下、浮上する被害があった。
同事業の復旧工事は、厚真ダムの二次災害を防ぐ応急工事を行って緊急落水し、放流機能を確保した上で着手。洪水吐の復旧では、解体や撤去が不要で、工期短縮効果などがある「プレキャスト埋設型枠」を採用した。パイプラインの工事では、継手(接合部)の離脱を防止し、地震などの発生時に管路の破損や漏水を防ぐ「鎖構造継手管路」を、被害の大きかった曲管部や軟弱地盤で使用した。
復旧に時間を要する中、水田営農に必要な農業用水の19年からの確保については、厚幌ダムで暫定用水を確保し、既存施設の活用と仮施設の造成で水田への用水供給を可能にした。同改良区と町で用水利用の調整を担うなど、関係機関が協力し、早期の営農再開へ対応した。
同事業は23年度に終え、24年度に厚真ダムと厚幌導水路は供用を開始した。先進的な災害復旧の早期実施は、国内の地域産業の存続、復興のモデルになると認められた。
授与式は10日に青森県弘前市の弘前大学で行われ、同改良区の細川隆雄理事長や宮坂尚市朗町長が出席し、賞状を受け取った。細川理事長は「名誉な賞を受賞でき、とても光栄」と述べた。

















