イスカのくちばし 交差することで食に対応

イスカのくちばし 交差することで食に対応
イスカのオス

 「イスカ」という野鳥をご存じでしょうか。

 スズメ目アトリ科に分類され、体長(くちばしの先端から尾羽の先端までの長さ)は17センチで、スズメ(スズメ目スズメ科)よりもやや大きいサイズです。一年を通じ北海道で生息する種で、夏季は主に高地で過ごし、冬季になると平地へ移動します。また、北方圏より南下する個体もいるので、この時期になると身近な環境で観察されることがあります。

 ちなみに今シーズンは飛来する数が例年より多く、市内各地で確認されています。私も苫小牧に在住して17年目になりますが、これほどの頻度でイスカを観察できたのは初めてです。秋晴れの青空の日には、全身に赤い羽毛をまとうオスの個体の美しさが目を引きます。

 そんなイスカの観察ポイントは針葉樹です。イスカはマツ類の種子や芽を採食するため、針葉樹が植えられている街路樹などで観察しやすいです。ウトナイ湖周辺では、針葉樹ではありませんが、湿原やその周辺に生える代表的な広葉樹、ハンノキでも松かさによく似た形の果穂の中の種を食べに来ていました。

 もし、イスカを見る機会があったら、ぜひ着目していただきたいのが、くちばしの形です。双眼鏡でないと細部まで確認しづらいのですが、くちばしの先端が交差した特殊な形をしています。以前、ウトナイ湖野生鳥獣保護センターにイスカが保護された際、搬入した方が「ケガをしてくちばしがずれている」とおっしゃったことがあるくらいです。そんなくちばしは、松かさの鱗片(りんぺん)をこじ開けて、中の種子を食べるために進化した、極めて特徴的な形状なのです。

 ただ不思議なことにふ化したばかりのヒナのくちばしは交差していないとか。自分でも十分に餌を採食できるようになった頃に、交差してくるようです。

 食べるために劇的な進化を遂げたイスカのくちばし。一目見ただけで、私たちのくちばしの概念は覆されます。今シーズンは、いつくらいまで観察できるでしょうか。狙い目は針葉樹です。皆さまも、こんな魅力的な野鳥に出合えることを願っています。(ウトナイ湖野生鳥獣保護センター・山田智子獣医師)

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