北海道土産として知られる「木彫り熊」。発祥地とされる渡島管内八雲町では、彫師の温かみのある作品がSNSなどで話題を集め、再び脚光を浴びている。最初の作品が発表されて今年で100年。地域活性化の起爆剤にしようと、町や町民の取り組みは続く。
木彫り熊制作が始まったのは1920年代で、尾張徳川家当主だった徳川義親氏がスイスから民芸品を持ち帰り、同町に所有していた農場で働く人々に制作を勧めたことがきっかけとされる。24年には、町で開かれた品評会に第1号が出品。その後、制作を学べる講座が始まり、町民に広がった。同町の木彫り熊は北海道土産として一躍有名になったが、太平洋戦争後は、別の地方で作られたサケをくわえた木彫り熊が人気を集めたことなどで、影を潜めた。
八雲町の木彫り熊が再び注目されるようになったのは、ここ数年だ。細かい毛並みが表現された愛らしい表情の作品や、木を切った面でクマを思わせる独特な作風がSNSで話題を集めるようになった。町を訪れる人も増え、木彫り熊資料館の2022年度の来館者数は、開館した16年度の2倍の6000人超に増加した。
町は、セレクトショップ大手「ビームス」と共同で、木彫り熊をモチーフとした衣料品や雑貨を開発するなど、魅力発信に努める。学芸員の大谷茂之さん(38)は「感度の高い人が関心を持つようになった」と笑顔を見せる。100年を迎える今年は町主催のイベントも予定しており、「そもそもの始まりが生活を良くするための町おこし。多くの人に木彫り熊を知ってもらい、未来につなげたい」と意気込む。
「気軽に手に取ってほしい」。同町に住む青沼千鶴さん(44)は21年、町内外の木彫り熊の作品や関連グッズを展示・販売する店を開いた。実演や彫り体験のイベントも企画し、昨年6月のイベントには約1500人が訪れた。「木彫り熊が北海道を代表するアートになる可能性もある」と話し、「伝統を途絶えさせず、世界に発信できればいい」とほほ笑んだ。



















