元白鵬に2階級降格の厳罰 北青鵬の暴力問題で 大相撲 北青鵬、愚行で夢絶たれ 希薄だった問題意識 宮城野親方

元白鵬に2階級降格の厳罰 北青鵬の暴力問題で 大相撲 
北青鵬、愚行で夢絶たれ 希薄だった問題意識 宮城野親方
弟子の北青鵬(右)の暴力問題について、報道陣を前に謝罪の言葉を述べる元横綱白鵬の宮城野親方=23日、東京都墨田区の宮城野部屋

 日本相撲協会は23日、東京・両国国技館で臨時理事会を開き、元横綱白鵬の宮城野親方(38)に対し、弟子の幕内北青鵬(22)=本名アリューナー・ダワーニンジ、札幌市出身=が暴力行為を繰り返していた責任を問い、監督義務違反などで委員から無役の年寄へ2階級降格と報酬減額(3カ月、20%)の懲戒処分を科すことを決めた。北青鵬に関しては、理事会の前に提出された引退届を受理した上で、引退勧告に相当する懲戒だったと確認した。

 元白鵬が師匠の宮城野部屋については、3月の春場所は所属する伊勢ケ浜一門によって師匠代行に任命された親方が部屋を監督。4月以降は当面の間、宮城野部屋を同一門が預かって元白鵬を師匠、親方として指導、教育を行うことを検討する。相撲協会によると、処分を言い渡された宮城野親方は「師匠として重く受け止め、深く反省している」などと述べた。

 相撲協会の役職で年寄は、定年後に再雇用される参与を除けば最下位に当たる。降格は相撲協会の7段階の処分で解雇、引退(退職)勧告に次いで3番目に重い。

 北青鵬はモンゴル生まれ、札幌市育ち。2020年春場所初土俵、23年春場所新入幕。身長204センチの大器で期待されたが、弟弟子に対して顔面や睾丸(こうがん)を平手打ちするなど、日常的に悪質な暴行を加えていたことが問題視された。

 日本相撲協会のコンプライアンス委員会による調査で明らかになった北青鵬の暴力行為は、長期間かつ日常的に行われていたものだった。「卑劣極まりない」として、処分案は引退勧告が妥当だと断定。本人は角界から去る決断を下した。

 弟弟子の背中や顔面、睾丸(こうがん)への平手打ちなどに加え、財布に瞬間接着剤を塗る悪質ないじめ行為も。殺虫剤スプレーに点火し、バーナー状にした炎を体に近づけるという危険な事案も報告された。彼らの部屋での仕事ぶりの不始末に対する「制裁」として暴力を振るい、あろうことか、痛がる姿を見て面白がっていたという。

 204センチの長身。スケールの大きな取り口で将来を期待されていた。親方になりたいとの夢を口にしたこともあった22歳。現役時代の白鵬にスカウトされて入門した大器は、自らの愚行によって未来への道が絶たれた。

 史上最多45度の優勝を誇るかつての第一人者に厳しい処分が下された。元横綱白鵬の宮城野親方は「弟子を守ることができなかった。責任を受け止めている」。報道陣の前で深々と頭を下げ、うつろな表情を浮かべた。

 師匠として北青鵬の度重なる暴力行為を把握していながら、報告義務も怠った。ある中堅親方は「モンゴル出身の中には、強くなればなるほど、何をしても許されると思ってしまう力士がいる」と指摘。自身と同じくモンゴルにルーツを持つ弟子の愚行に対し、問題意識が希薄だった。

 横綱時代に自身の取組に物言いを求めたり、土俵下での優勝インタビューの後に万歳三唱を観客に促したりしたことなども問題視。日本相撲協会は、引退して親方になる際、守るべき事項を順守する旨の誓約書にサインさせたほど。今回の懲戒にも、現役時代終盤の振る舞いが考慮された。

 1月の協会の理事候補選挙に出馬するとみられた時期もあったが、結局断念。厳罰は、元白鵬が将来的にトップの理事長を目指す野望を持っていると感じ取り、その存在を恐れる勢力がここでけん制しておきたいという思惑もあったはずだ。

 臨時理事会では宮城野部屋の今後の運営についても議論された。最悪のケースとして想定された部屋の閉鎖は免れたものの、部屋は4月以降、所属する伊勢ケ浜一門の預かりとなる可能性があり、今後も予断を許さない。

 少年相撲の国際親善大会「白鵬杯」を中心となって運営するなど、現役時代から後進育成や普及活動に熱心だった。慈善活動にも情熱を傾けていた中、思い描いた将来像は遠のいた感がある。良くも悪くも、注目される立場であることを改めて痛感したことだろう。一からやり直し、愚直に取り組む姿勢が求められる。

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