頂点を目指した高谷の戦いはわずか2分12秒で終わった。一瞬の隙を突かれてフォール負け。それでも2位という結果には大きな価値があった。「僕なんかが五輪に出ることがあり得ないと思っていた。よく頑張った」。涙と笑みが入り交じった表情を見せた。
結果を出すためにあらゆる準備をした。今年4月からはSNSを見ることをやめたという。「100の応援より、1の心ない声の方が響いたりする。そういうのに触れないようにした」。
五輪へ向けてレスリングの技術を磨くのはもちろん、精神面もしっかり整えた。重圧のかかる舞台でも常に笑顔で誰よりも楽しんだ。そんな心の持ちようが、世界的にも層の分厚い階級での銀メダルにつながった。
高谷家の悲願もかなえた。兄の惣亮は2021年東京五輪まで3大会連続で出場しながらも、メダルには届かなかった。兄の思いも背負って戦った今大会。「僕一人ではかなえられなかった。(兄から)たすきを受け取り、メダルにつなげられた。高谷兄弟、高谷家の物語は十分な成果があった」。喜びをかみしめた。

















