苫小牧漁港区の屋根付き岸壁で作業環境が改善、夏は涼しく、冬は暖かく、水産物の「鮮度低下も解消」

苫小牧漁港区の屋根付き岸壁で作業環境が改善、夏は涼しく、冬は暖かく、水産物の「鮮度低下も解消」
屋根付き岸壁でスケトウダラの網外し作業も快適

 国土交通省が苫小牧港の漁港区で進めている屋根付き岸壁の工事は第2期まで終了し、すでに漁業者が利用を始めているが、夏は涼しく冬は暖かいなど効果を上げている。苫小牧漁業協同組合(伊藤信孝組合長)が独自に漁業者の就労環境を中心に調べ、整備効果をデータにまとめた。費用対効果の指標も夏は1.37、冬は1.23と標準の1を上回り、苫小牧漁協は「漁業者の喜びが数字になって表れている」としている。

 苫小牧港を含む道内6港湾の管理者が策定した農産物輸出促進計画を国土交通省が全国で初めて認定。2017年から漁港の岸壁に沿って屋根を付けている。屋根は高さ4メートル、全長251メートル、幅8・5メートルのコンクリート製。工事は第1期が18年3月、第2期は19年3月に完了した。すでに全長127メートル分を利用している。来年3月に第3期工事も終える予定だ。

 同漁協が整備効果の調査をコンサルタントに委託した。建設前から岸壁上の気温や湿度、風力などを季節ごとに測定。整備後と比較して細かくグラフ化した。また、就労環境の改善状況も指標化し、漁業者や市場などの関係者から聞き取り調査も行った。結果は夏と冬で報告書にまとめ、今年11月に同省や道内選出の国会議員などに提出した。

 費用対効果は水産庁のガイドラインに基づき、気温変化から水産物の鮮度保持効果を試算。スケトウダラ漁の荷揚げや網外しの作業時間短縮、電気料金の削減などの利益を、屋根付き岸壁工事の総事業費18億3500万円に対して割り返した。算定結果は夏が1・37、冬は1・23となっており、標準の1を上回る高い効果が出ている。

 夏は今年8~10月にかけ、午前0時~午後2時まで10分間隔で温度や湿度を測定。8月は気温25度以上の夏日でも屋根内は快適だった。25度以上では食中毒の原因となる細菌が活発化するが、同漁協は「鮮度低下も解消された」と強調する。

 冬は昨年12月~今年1月に測定し、最高気温が0度を下回る真冬日が、屋根内は6日間に対し屋根外は18日間。風と気温による体感温度の低下に関する指数(WCI)も、体の負担になる900以上になった時間が屋根外は34時間だったのに対し、屋根内はゼロだった。冬季はスケトウダラの網外し作業が未明から早朝にかけて厳しい風雪にさらされるのが常だったが、大きく改善された。

 漁業者、市場関係者に実施したヒアリングでも「これまで降雪時の作業は大変だった。屋根付きで北風が防げるようになった」「照明も明るく作業がはかどる」「足元が雪で凍結することがなくなった」「夏は直射日光が遮られて鮮度がよい状態で出荷できる」「屋根でカモメやカラスが来るのも防げるので衛生面もよくなった」などの高い評価が寄せられた。

 事業主体ではない漁協がこのような調査を自ら行うのは珍しいが、苫小牧漁協は「将来ビジョンに沿って岸壁をどう活用していくかが大事。効果が現れていることを数字で示し、各方面に納得してもらうことで今後につながる」と意義を強調する。今後は水産物の鮮度向上、輸出促進の実績など追跡調査も検討しており、「屋根付き岸壁は漁業促進の第一歩。さらに成果が上がるよう取り組む」と意気込んでいる。

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