最新の技術で、最高の瞬間を―。人工知能(AI)や映像技術を駆使し、東京五輪・パラリンピックを盛り上げようとする動きが広がっている。1964年の東京五輪から半世紀余り。進歩した技術は、未来の暮らしも変えるかもしれない。
▽AIが採点支援
「ロボットで体操競技の採点ができないだろうか」。開発のきっかけは2015年、当時日本体操協会専務理事で、現在は国際体操連盟会長を務める渡辺守成さんの一言だった。高難度化する技を正確に判定する技術へのニーズが高まっていた。
富士通が開発した「体操採点支援システム」は、AIで選手の動きを解析し、技の成立を判定する技術。開発には同社のセンサー技術や、AIでゴルフスイングを映像解析する技術を応用した。
体操の技の数は男女合わせて1300を超える。AIには日本体操協会や選手の協力を得て技の特徴を何度も学習させた。開発担当の大岩祐子マネジャーは「試合を楽しむためにも、より正確な判定を目指した」と話す。
56年前の東京五輪では陸上競技に初めて写真判定が導入され、その後はビデオ判定の採用が広がった。富士通は今回の東京五輪でAI判定の導入を目標にしている。
既に国際大会で活用され、技術的には一定程度の自動採点も可能という。将来的には人の動きを正確に捉える技術をリハビリなどに応用することも視野に入れる。
▽よりリアルに
観戦方法も変わりそうだ。多くの人が白黒テレビに群がり、世界の一流選手の競技に固唾をのんだ前回の東京五輪。当時最先端のカラーテレビも普及し、今は高精細な4K、8K放送も始まった。
NTTが開発したのが、試合の映像や音をリアルタイムで送る技術「Kirari!(キラリ)」。複数の4Kカメラで撮影した会場の映像を瞬時に組み合わせ、遠隔地でも臨場感ある映像を楽しめる。今回の大会では、パブリックビューイングなどでの利用を目指す。
テニスなど少人数の競技では選手の動きをよりリアルに、サッカーなどの大きな競技場での試合は、映像を組み合わせて会場全体の映像を届ける。これまでもライブの同時配信などで利用され、臨場感が好評を得てきたという。
開発のポイントは「どうすれば、そこに人がいるかのように再現できるか」。選手やボールなどの動きを抽出し、立体的に見られる投影手法を採用。選手の影や会場の照明に関するデータも組み込むことで、再現性は高まった。開発を担当した鈴木健也主幹研究員は「これまで以上に迫力ある映像を、遠隔地からでもぜひ楽しんでほしい」と力を込める。
▽遠隔地で「体感」
体が不自由で会場に足を運べない人のために、トヨタ自動車は「分身」となって現地の映像や音声を体感できるロボット「T―TR1」の開発を進めている。
高さは約2メートル。約60インチのディスプレーの上部に360度を捉えるカメラを搭載し、遠隔操作で動かせる。人の歩行速度に合わせた時速6キロ以下で走行し、会場を自由に「移動」できる。
ディスプレーには遠くにいる観戦者を映し出し、周囲の人と自然に近い形での会話も可能だ。同社の古賀伸彦未来創生センター長は「全ての人に移動の自由を届け、スタジアムの熱気を感じてもらうお手伝いができれば」と話している。
















