白老町のアイヌ伝統工芸サークル「テケカラペ」(山崎シマ子代表)が、樹皮を素材にしたアイヌ民族伝統の織物作りに取り組んでいる。ニレ科の樹木オヒョウの皮から糸を作り、昔ながらの織り機で反物に仕上げるまでの工程を忠実に再現する活動。足かけ3年の作業で貴重な反物は近く完成する。同サークルは、製作した布地でアットゥシ(樹皮衣)と呼ばれる着物の製作も考えている。
アイヌ民族はかつて、クマやシカなど動物の毛皮、サケやマスなど魚の衣、木の皮など自然の産物や交易で手に入れた木綿を材料に衣服を仕立てた。樹皮は主にオヒョウを利用したが、環境の変化で今では手に入りにくくなり、アットゥシの布地を作ることが難しくなっている。
白老生活館(高砂町)を拠点に織物や編み物、刺しゅうなどアイヌ民族の手仕事を継承するテケカラペは、10年ぶりにアットゥシ織りを再現しようと、アイヌ文化関連の助成金を活用し2018年から制作活動を開始。オヒョウ探しから始め、オホーツク管内遠軽町で見つけた丸太3本を入手した。
メンバーは丸太の樹皮を剝ぎ、長く水に漬けて柔らかくした後、干して長期保存。乾いた樹皮の内皮を3ミリほどの幅で裂き、細長くした繊維を手でより糸にする地道な作業を半年かけて繰り返し、昨年秋までにようやく糸を仕上げた。
引き続き、伝統の織り機で糸を織る作業に取り掛かり、350本の縦糸に横糸を通して布にした幅約30センチ、長さ8メートルの布地を近く完成させる。
3本の丸太から採取した2キロの樹皮を素材に反物作りを進めてきた山崎代表(79)は「工程を再現する作業に関わったメンバーにとって、アイヌ民族の文化を身に付け、伝承していくための貴重な経験が得られた」とし、今後、アイヌ文様を施したアットゥシの衣服に仕立てることも考えているという。
一方、アイヌ文化を伝承していく上での課題も指摘し、「オヒョウは昔、白老の山にも自生していたが、今は手に入れることが非常に困難。オヒョウだけでなくガマ、シナなど伝統工芸の自然素材が少なくなり、再生が必要だ」と話した。

















