苫小牧市の新市長が金沢俊氏に決まった。5期18年余り続いた岩倉博文前市政の継承をアピールし、子育て分野を中心に、地域経済の発展、官民連携など、七つのビジョンを公約に掲げてつかんだ勝利。JR苫小牧駅前の再開発をはじめ、岩倉市政が道筋を付けた課題を仕上げ、新たな苫小牧を築いてほしい。金沢氏自らの訴えだが、少子高齢化や人口減と悩ましい課題を抱える中、多様化する市民ニーズにどう応えるか、金沢氏の手腕が問われる。
今回の市長選は、岩倉前市長が体調不良を理由に11月5日付で退職してから、わずか1カ月余りで行われた。同9日に出馬を表明した金沢氏は、市議会議員や各スポーツ団体などで活動した実績、知名度の高さなどで選挙戦を先行した。岩倉前市長の後継指名も追い風に、経済界を中心に支援の輪を広げたが、結果をみると相手候補の追い上げを許した格好。幅広い市民の声に謙虚に耳を傾け、今後の市政運営に励んでもらいたい。
一方、田村氏は出馬表明が告示8日前の同23日と遅れ、知名度不足もあって浸透し切れなかった。立憲民主党勢力からの出馬で、同党から候補が出るのは旧民主党時代の2010年以来。支持基盤の労働組合なども組織力を発揮したが、あと一押しが足りなかった。岩倉前市政の野党的立場で、田村氏も政策の一部見直しを訴えたが、批判を過度に強めることなく、公約などを誠実に主張した印象だ。ともすれば争点を見いだしづらく、「与野党対決」に持ち込みきれなかったことが、敗因の一つかもしれないが、政策中心の選挙活動に敬意を表したい。
投票率は極めて低く、有権者の6割以上が投票を、ひいては意思の表示を放棄した。急転直下の超短期決戦となり、政策や公約について議論する時間も限られたが、過去最低だった前回とは異なり、支持基盤も確かな新人同士が競り合う中の数字としてはあまりにも寂しい。前回市長選の解説でも書いたが、選挙は民意を反映させる民主主義の基本で、その主役は「有権者」だ。市民の主権者としての意識も問われている。
(報道部長政治経済担当・金子勝俊)
















