苫小牧市長選座談会 金沢氏 カラーはこれから 田村氏 クリーンな選挙

苫小牧市長選座談会 金沢氏 カラーはこれから 田村氏 クリーンな選挙

 苫小牧市長選で、初当選を果たした金沢俊氏と、及ばなかった田村一也氏をそれぞれ担当した記者とデスクが市長選を振り返った。

 A「金沢氏は2万8879票、田村氏は2万4925票で、差は3954票だった。金沢氏は、前回市長選(2022年6月)で岩倉博文前市長が獲得した得票とほぼ同水準。一方、前回は岩倉氏の対抗馬が政党の支援を受けない新人だったが、今回は立憲民主党勢力から出馬した田村氏が接戦に持ち込んだ」

 B「金沢氏は5期18年弱の市議会議員実績があり、市議選でもトップ当選の常連だが、出馬表明した当初は対立候補が見えず、戦いも進めづらかったと思う。田村氏が出てきたことで、陣営も危機意識を強めたが、猛追を許した」

 C「田村氏は、出馬会見の時は緊張した様子で、ちょっと頼りなげな印象もあったが、演説など話す機会があるたびに、政策を堂々と訴えるようになった。立憲民主党も、労働組合も、組織を挙げて、よく戦ったと思う」

 A「立憲民主党勢力からの出馬は、2010年の旧民主党時代以来。『不戦敗』が3度続いたので、何としても候補を立てようと熱心に動き、公党としての責任を果たした。党道連の逢坂誠二代表も苫小牧に2度入るなど挙党態勢だったが、地元(道9区)の山岡達丸氏はほとんど姿を見せなかった」

 C「山岡氏は今回の市長選について『中央の政治情勢をそのまま持ち込まず、市の将来のために議論して』と訴えてきた。自身の支援者と、金沢氏の支援者が、一部重なっていたこともあり、動きづらかった面もあると思う。山岡氏は選挙戦最終日に、田村氏の応援に入り、最低限の役割は果たしたのではないか」

 B「金沢氏は、市議時代からの支持層、出身会派の新緑や公明など、それぞれ応援してくれるところは固めたが、初めての市長選で手探りの部分も多かった。岩倉前市長の後継指名を受け、市議時代にはなかった企業の支援なども受けられたのは、やはり大きい」

 A「金沢氏は先に出馬を表明したが、議員の辞職は遅れた。もっと早く議員を辞めていれば、事実上の選挙戦に専念でき、公職選挙法に基づく市議の補選も行われた」

 B「市議会は『与野党』が拮抗(きっこう)しており、パワーバランスを考えた結果だろう」

 A「市議補選が行われれば、自民系が1議席を失う可能性があった。立憲や共産は組織力を生かして有利になることも想定された。ただ、市議会では先日、定数維持を決定しながら、欠員1が生じたままになる。とても残念だ」

 C「公約は似たり寄ったりのところが多かった気がするが、田村氏の給食費段階的無償化は印象的で、これを入り口に『政策を聞いてみよう』という人も多かった。金沢氏の『子どもど真ん中のまち』なども、本来は印象的なキャッチコピーのはずが、そんなに響かなかったのでは」

 A「岩倉市政の継承をアピールしたことで、『何も変わらないんじゃないか』と言う人もいた」

 B「金沢氏は経験もあり、市財政も把握し、公約も現実的な組み立てをしていた。給食費無償化が強烈でかすんだかもしれないが、子育て施策など岩倉市政が手を付けていない部分をしっかりと主張した。予算を熟知し『これならできる』『これは時間がかかる』と選んでおり、新年度には小学入学祝い金事業も実施するはず。いじめや不登校対策も熱心で、国の補助メニューなども確認しながら施策にすると思う」

 C「田村氏陣営はSNSにも力を入れていたが、誹謗(ひぼう)中傷合戦にならず、クリーンな選挙だった。長期に及んだ岩倉市政のゆがみなどは指摘していたが、『市長が悪かった』などの直接的な批判も避けていた」

 A「あまりに短時間とはいえ、両陣営が政策を訴えた選挙戦だった。そんな中で投票率が38・70%にとどまり、40%を下回った」

 C「誰が市長になっても『何とかなる』と思ったのか、『駄目だ』と思ったのかは分からない。田村氏は投票率の低さは『自分の力不足』『興味を持たせられなかった』と語っていたが、有権者も興味を持たないといけない」

 B「金沢氏は公約で『市民総活躍』をうたい、『市役所だけで何でもできる時代ではない』と言ってきた。いろんな人を巻き込みながら、どんどん『金沢カラー』を出してほしい」

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