治療抵抗性統合失調症に効果 「クロザピン」処方可能に 東胆振で初、10月から治療で 道央佐藤病院

治療抵抗性統合失調症に効果 「クロザピン」処方可能に
東胆振で初、10月から治療で 道央佐藤病院
連携体制を確認する沖市医師会長(中央)と道央佐藤病院の佐藤理事長(右)、岩城副院長(左)

 苫小牧市樽前の道央佐藤病院(石川幹雄院長)は東胆振で唯一、治療抵抗性統合失調症に唯一効果が証明されている薬「クロザピン」を処方している。苫小牧市医師会(沖一郎会長)が協力し、王子総合病院(岩井和浩院長)との連携で同薬処方医療機関に登録。関係者は地域医療の向上に気持ちを新たにしている。

 道央佐藤病院などによると、精神疾患の治療抵抗性統合失調症は、複数の抗精神病薬を十分な期間、十分な量を投与したにもかかわらず、十分な効果が見られない症例のこと。統合失調症患者の2~3割に見られ、国内の患者は約20万人。苫小牧市を含む東胆振2次医療圏域では、統合失調症患者は約1500人、治療抵抗性統合失調症患者は約450人と推定される。治療抵抗性統合失調症患者にクロザピンを使うことで、2人に1人は効果があるというが、同圏域で処方する医療機関はこれまでなかった。

 一方、血液中の白血球が減少し、免疫に影響する無顆粒(むかりゅう)球症という、重大な副作用が約1%起きるとされる。処方医療機関として登録するには、副作用に滞りなく対応するため、血液内科医との連携が不可欠。このため道央佐藤病院は市医師会に協力を求め、王子総合病院の血液腫瘍内科と連携することに。両院で覚書を結び、10月15日付で処方医療機関の登録を終えた。

 道央佐藤病院の佐藤寛理事長は「統合失調症はよくある病気にも関わらず、最終的な治療の選択がこれまでできなかった。医師会の協力で処方を実現できた」と感謝し、両院の連携により「認知症患者を迅速に受け入れることもスムーズになる」と話す。沖会長も「バックアップを約束した。協力して病気治療に当たる地域の取り組みを発展させたい」と意気込む。

 同院では10月から実際に同薬を処方しており、治療している市内20代患者の家族は「これまで合う薬がなかったり、副作用で使えなくなったりしていたが、今回の投薬で落ち着き、人生を取り戻す希望が見えてきた」と喜ぶ。岩城弘隆副院長は「病院間の連携について見直す機会にもなった」と同薬の処方を始めた意義を説明し、「患者の心に明かりをともすことにつながる」と話している。

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