砂防施設の整備続く 樽前山噴火時に泥流対策 苫小牧

2022年度に完成した砂防ダム。高さが14.5~20.5メートルある

 樽前山噴火に伴う泥流の氾濫を抑えるため、北海道開発局は、苫小牧市内別々川―苫小牧川間の主な河川で砂防施設の整備を進めている。1994年から「樽前山直轄火山砂防事業」として実施。この30年間で覚生川や小糸魚川などの七つの渓流の中流域に砂防ダム(えん堤)7カ所と遊砂地5カ所を整備した。現在も錦岡の熊の沢川周辺2カ所で工事が続く。

 開発局は1667年と1739年に起きた大噴火を念頭に、最も大きな被害として、積雪期に「融雪型火山泥流」3240万立方メートルが一気に流れ込むことを想定。市街地での被害を軽減させるため、山麓で複数の砂防施設整備を計画している。

 砂防ダムは鋼矢板を筒状に組み合わせ、中に土砂を敷き詰めた上、厚さ60センチほどのコンクリートでふたをした構造物(セル)。複数を並べて泥流をせき止める。1カ所では止められない前提で、あふれ出すダムの下流側にコンクリート製のブロックを敷き詰め、泥流の勢いをそぐ工法を取り入れている。

 熊の沢周辺では、3カ所にダム整備を計画中。このうち、2022年度に完成したダムは、筒状の巨大な赤茶色の構造物が並んでいた。1基当たり直径32・3メートル、高さ14・5~20・5メートル。幅244メートルの沢に8基連なっている。

 室蘭開発建設部苫小牧砂防海岸事務所の担当者は「現地が軟らかい地盤で、構造物の強度を保つため、一定の大きさが必要だった」と構造物の巨大な理由を説明する。

 残り2カ所に整備するダムについては22年度に着工。24年度工事はすでに終了しており、来年度に再開予定だ。うち1カ所は27年度の完成を見込むが、もう1カ所は未定という。

 21年度の同事業の再評価で、「降雨型」の火山泥流(297万立方メートル)に対する整備率は92%とした一方、「融雪型」に対する整備率は19%にとどまっている。事業費を物価高なども考慮し54億円増額の約621億円に見直し、2040年度までの完成を目指している。

 同事務所の谷口清所長は「噴火で発生する火山泥流量は規模が大きく、砂防施設の整備は完成までに長期間を要するが、事業を着実に進め、地域の安心安全を向上させたい」と力を込めた。

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