苫小牧商工会議所の宮本知治会頭は、苫小牧民報の年末インタビューに応じた。深刻化する人手不足や物価高の影響、ソフトバンク(東京)の大型データセンター(DC)着工など地域経済を取り巻く環境の変化や、金澤俊新市政誕生などを振り返り、新年の展望を語った。
―今年の地域経済を振り返って。
「苫小牧に進出している大企業も、地域の中小・零細企業も、一番の課題は人手不足。物価上昇やエネルギー価格高騰などが足かせで利益を失っている。経営難になるほどではないが、厳しい現状とみている」
「通信大手のソフトバンクが今秋着工したDCや、千歳市で建設が進む次世代半導体製造ラピダス(東京)などの産業集積『北海道バレー構想』は、特にこの苫小牧、千歳、恵庭に集中している。苫小牧にとって千載一遇のチャンス」
―円安も進んだ。
「円安がどんどん進んでいるが、早く落ち着かせなくてはいけない。全てが連動している。円安が落ち着かないと、物価高もブレーキがかからない。何より戦争が終わらないと、化石燃料(価格)が落ち着かない。化石燃料が安定すれば徐々に為替も変わり、いろいろなものが変化する。来月20日にトランプ氏が米大統領に再度就任する。すぐに戦争を終わらせると豪語しており、どうなるか分からないが期待したい」
―「旧エガオビル」解体とJR苫小牧駅前再開発については。
「ずいぶん時間がかかったが、踏まなければならないプロセスがあり、やむを得なかったのでは。岩倉博文前市長が見通しを付けることができた点は、成果でもあったと思っている。資材と人件費の高騰や人手不足の中、引き継ぐ金澤俊新市長はまず、旧エガオビルの解体に取り組み、しっかりと苫小牧の一つの顔をつくってもらいたい。商工会議所としても他人事ではない。取り組めるものは一緒に取り組んでいく」
―金澤市長誕生をどのように受け止めたか。
「『流れを変えることなく引き継ぐ』と言った金澤氏の当選は、われわれ経済界にとっては非常にありがたい。この地域は、港やこれからのCN(カーボンニュートラル、温室効果ガスの排出ゼロ)社会、GX(グリーントランスフォーメーション)、DX(デジタルトランスフォーメーション)含めて、国費を必要とする土地柄。政権与党の代議士がいなくなり、非常に大きなブレーキがかかっている中、苫小牧市政の流れを変えず推進できる。経済界も協力し、まちづくり、産業への道筋を付けていければ。新市長には大いに期待している」
―脱炭素の取り組みは。
「国家プロジェクトと言っていいと思うが、地球温暖化を見据えたCN社会構築、特にGXは日本が先行しようとしており、国だけではなく各企業も力を入れている。いかにコストに見合ったCN社会を形作るかが重要。バブル崩壊後、失われた30年と言われる中、これを機に挽回しようと、CN実現を目指している。日本の経済的な力を復権させるため、達成しないとならない大きな問題。すでに取り組みは始まっているが、形にするためさらに加速し、実現できるように頑張っていかなくては」
―2025年の展望は。
「人手不足は急に改善されない。各業種、業態が知恵を振り絞り、対応する努力をしなければならない。日本全体で見れば『攻めの経営』をしている企業はある。北海道に進出しようとする企業や、今の事業を拡大するために土地や人材も必要としている企業から、苫小牧、特に苫東地域がさらに脚光を浴びることは間違いないと思う」
















