白老町虎杖浜の温泉ホテルいずみ(福田茂穂社長)は、高台の敷地内にアイヌ民族の古式舞踊を演じる屋外ステージを整備し、国の重要無形民俗文化財指定の伝統文化を宿泊客らに紹介する取り組みを始める。同ホテルのみならず、虎杖浜地区や登別温泉で営む他の宿泊施設の客も受け入れ、アイヌ文化を生かして白老町と登別市の広域観光振興を図る。
いずみは、アヨロ海岸付近の高台に約33ヘクタールの広大な土地を所有し、敷地内にアイヌ民族の神話の舞台「カムイミンタラ」(神々が遊ぶ場)がある。この他、英雄オキクルミの尻もち跡「オソロコツ」など伝説の場が近くに数々あり、古くからアイヌ民族と深い関係にある一帯だ。
白老で7月に民族共生象徴空間(ウポポイ)が開業し、アイヌ文化への関心が高まる中、いずみは所有地の特色を生かして観光客へ伝統文化を発信する取り組みを企画。パークゴルフ場として活用している敷地の一角に、太平洋やカムイミンタラをバックにした幅10メートル、奥行き8メートルの木製ステージを整備した。
舞台では冬場を除く4~10月ごろの期間、毎週土曜日と祝前日の夕方、白老民族芸能保存会(長谷川邦彦会長)がイヨマンテリムセ(熊の霊送りの踊り)、ハンチカプリムセ(水鳥の舞)、フンペリムセ(鯨の踊り)など白老で継承されている古式舞踊やムックリ演奏を40分間にわたって披露する。いずみは、アイヌ伝統芸能を組み込んだ宿泊プランを開発し、9月ごろから売り出す考えだ。
いずみだけでなく、「心のリゾート海の別邸ふる川」と「虎杖浜温泉ホテル」の虎杖浜地区2施設のほか、登別温泉の宿泊施設にもステージを開放。各ホテルが宿泊客を送迎し、ステージの古式舞踊を楽しんでもらう仕組みをつくる。福田社長は「観光連携協議会を持つ白老町と登別市が一緒に観光振興を図る場としたい。登別温泉のホテルがステージを利用する場合、地元登別の芸能保存会に出演してもらうなど、宿泊客に地域の伝統文化を伝える体制を整えたい」と言う。
8日には白老民族芸能保存会メンバーが、アイヌ民族の伝説地を背景にしたステージで古式舞踊の演目を練習。長谷川会長は「定期的な活動の場が与えられるのは、国の重要無形民俗文化財となっている古式舞踊を守ることにつながる」と期待する。
いずみは今後、ステージ活用の方法について他の宿泊施設と具体的に協議を進め、「宿泊者以外の一般公開も検討し、虎杖浜の地から地元アイヌ文化を発信していきたい」としている。

















