侮辱罪を厳罰化する改正刑法が7日施行された。インターネット交流サイト(SNS)上の誹謗(ひぼう)中傷問題が深刻化する中、プロバイダーに投稿者の情報開示を求める訴訟が近年急増し、被害者には訴訟費用などで負担となっている。
「本当にお金がかかる。若者は泣き寝入りしてしまう。被害を受けたら救済できるようバックアップしてほしい」。SNSで中傷を受けた後に命を絶ったプロレスラー木村花さん=当時(22)=の母響子さん(45)は、改正刑法が成立した6月の記者会見で訴訟費用の負担について問題提起した。
侮辱罪や名誉毀損(きそん)罪は親告罪。会見に同席した清水洋平弁護士は「警察に受理してもらえるよう発信者情報開示請求を被害者が行って特定する必要がある」と説明した。
投稿者情報の開示請求の大半を扱う東京地裁民事9部によると、提訴件数は2017年に403件だったのが、18年に480件、19年が592件と増加。20年は780件、21年は894件と右肩上がりが続く。
響子さんらと活動し、SNS中傷問題に詳しい佐藤大和弁護士は「以前よりも声を上げる人が増えている」と指摘する。ネット上の住所に当たるIPアドレスの開示請求をサイト管理者に行い、プロバイダーにもアクセス記録の保存請求をするなど手続きは煩雑で、訴訟費用は1件当たり約50万~70万円に上る。それでも「投稿者を必ずしも特定できるわけではない」という。
10月には投稿者情報の開示手続きを簡略化する改正プロバイダー責任制限法が施行される。佐藤弁護士は「開示に非協力的なプロバイダーもある」とし、侮辱罪の厳罰化を機に「警察の運用も大切で、迅速に対応してくれるよう警察署の窓口を充実してほしい」と訴えた。














