伝える「むかわの記憶」 鵡川中で講話や避難訓練

リヤカーなどを引っ張って避難する鵡川中の生徒たち

 2018年9月に発生した胆振東部地震から2年を前に、むかわ町の鵡川中学校(広田智人校長)は1、2の両日、防災学習を行った。2011年3月の東日本大震災による津波経験者の講話をオンラインで聴いたほか、関係機関と連携した全校避難訓練を行い、日頃の備えについて再確認した。

 胆振東部地震を体験した記憶を共有し、次世代に教訓としてつなげていこうと、防災ウイーク「むかわの記憶」と題して一連の取り組みを企画した。

 講話は東日本大震災当時、宮城県女川町で中学校教諭だった佐藤敏郎さんと、同県東松島市で小学5年生だった雁部那由多さんが講師を務め、当時の体験談を語った。佐藤さんは、震災から2カ月後に国語の授業で俳句作りをした時の話を紹介。子どもの心情を考え、「私は反対だったが、子どもたちは言葉や文字にすることで現実や悲しみに向き合っていた。そうすることで次に進めたのでは」と振り返った。

 現在大学生の雁部さんは、学校まで津波が襲ってきた際に目の前で流される男性を助けられなかった体験を明らかにした。「当初は『なんで助けられなかったの?』と言われると思っていたが、周りにも同じ経験をしている人がたくさんいた。人に話すことで楽になった」と実感を語った。その後「伝えることで人の命を救う価値を持つのでは」と震災の体験を伝える語り部の活動をしており、鵡川中の生徒に対し、災害と向き合う日頃の備えなど「中学生でもできることはたくさんある」ことや「当たり前の日常が明日なくなるかもしれない。1日一つ思い出をつくって」とエールを送った。

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 2日の避難訓練は、学校にいる間に地震が発生し、40分後に大津波に襲われることを想定して行った。道立総合研究機構・建築研究本部北方建築総合研究所の職員が立ち会い、学校から避難場所になっている鵡川高校まで全地球測位システム(GPS)を使いながら、全校生徒が行列をつくって移動する流れを演習した。

 訓練は高齢者や障害者などもいることをイメージし、車いすやリヤカー、高齢者疑似体験装具も活用した。リヤカーを引いての避難を体験した3年生の三上太一さん(15)は「乗っている人のことも考えないといけないし、もし本当に(津波が)起きていたとしたら、もっと早く移動しなければ間に合わないと思う。周りを見て、言われるよりも先に正確な行動をできるようにしたい」と話していた。

 講評した広田校長は「2年前の地震を経験した者として自分はもちろん、周りの人の命を守るために行動して」と呼び掛けた。

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