環境省が「日本の重要湿地」に選定している白老町のヨコスト湿原の海岸で、漂着した流木などを燃やし、たき火をする行為が目立つようになった。法律上、海岸でのたき火は規制されていないものの、浜の背後の植生に燃え広がれば、重要湿地の生態系に大きなダメージをもたらす恐れもある。火災予防や湿原保全の観点から町は「ヨコストでのたき火は野火の発生につながる危険性もあり、注視していきたい」としている。
同町日の出町と社台にまたがるヨコスト湿原(面積33ヘクタール)は、自然海岸や砂丘、河川、湿地、草原、林など、”自然の見本市”とも言える多様な環境を形成。動植物も多彩で、これまでに植物463種、野鳥64種、昆虫209種が確認され、絶滅危惧種に指定されている生き物も少なくない。道は「北海道自然環境保全指針」の中で保全対象に位置付け、2016年には環境省が「日本の重要湿地」に選定。白老町も保全に努めている。
希少性の高い環境を誇る一帯だが、海岸でたき火をする行為が後を絶たず、海から漂着した太い流木を燃やした跡が目に付く。炭化した流木はそのまま放置され、その周辺にビールの空き缶やジュースのペットボトルなどが散乱している場所もある。廃棄物処理法に違反し、たき火でごみを燃やした跡も見られる。
ヨコストの海岸はカレイやサケなどの釣り場としても知られる。日の出前の暗いうちに浜へやって来る釣り人もおり、暖を取るためか、流木を燃やし、たき火をする姿を目撃した人もいる。
海岸を管理する室蘭建設管理部は、海浜でのたき火について「海岸法の基本的な趣旨として、海岸管理に影響がない範囲に限り、違法性はない」と言う。しかし、ヨコスト湿原でのたき火は、海岸のすぐ背後に多くの希少種を含む植生が広がり、その周辺に人家もあることから「延焼が懸念される」と指摘。ごみの放置については「海岸管理に影響を与え、廃棄物処理法にも抵触する」と問題視する。
白老町も、湿原の生態系にダメージを与え、町民生活に影響をもたらす野火など火災の発生を警戒し、8月下旬、警察に巡回を要請。「海岸利用者に火の取り扱いを注意喚起していきたい。たき火でごみを燃やす行為は違法であり、許されるものではない」としている。
白老では過去にヨコスト湿原とは別の海岸で、たき火を目にした住民の通報を受けて消防が出動するケースもあった。全国的には海岸でのたき火を原因とする火災が多数起きており、たき火を禁止する自治体もある。

















