アイヌ民族の女性たちが口元や手元などに施したシヌイエ(入れ墨)をテーマにした「シヌイエ アイヌ女性の入墨を巡る写真展」が11日、白老町大町3の空きテナント(創作一心跡地)で始まった。白老に縁のある女性ボーカルグループ「マレウレウ」メンバーのマユンキキさん(本名八谷麻衣さん)=札幌市=と、写真家池田宏さん=東京都=による企画。明治時代の同化政策で禁止されたシヌイエの伝統の美を過去と現代の写真で伝えている。
シヌイエは、アイヌの女性たちが通過儀礼的に口元や手の甲などに施した入れ墨。シヌイエをしなければ一人前の女性として認められず、結婚や儀式にも参加できなかったとされる。そうした入れ墨の風習は明治の同化政策で禁止され、代々受け継がれた伝統の美が奪われた。
写真展は、アイヌ伝統歌の音楽活動に取り組み、札幌でアイヌ語教室も開くマユンキキさんと、アイヌの血を引く人々の日常を撮り続ける池田さんがタッグを組んで企画した。飛生アートコミュニティー(白老町竹浦)主催の飛生芸術祭の一環として22日まで開催する。
会場では、口元にシヌイエをペイントしたマユンキキさんを撮影した池田さんのポートレート作品10枚を展示。マユンキキさんが旭川市、浦河町、様似町、新ひだか町静内・三石など各地のアイヌ女性に聞き取りし、調べた各地域のシヌイエの形を再現した。口元に施した昔の女性たちの古い写真も並べている。
マユンキキさんは、アイヌ文化伝承者として知られる旭川の川村カ子(ネ)ト(1893~1977年)さんの孫。旭川市でアイヌ文化を学んでいた20代の頃、シヌイエの美しさに気付いた。「ひいおばあちゃんの形見の着物を身に着け、口にペイントでシヌイエを施した時、これがアイヌの女の美なんだと、ふに落ちるように理解した」と言う。
2011年、29歳の時、アイヌ文化を学ぶために白老町の旧アイヌ民族博物館の研修生となり、文献でシヌイエについて研究。刃物で手の指や手首に傷を入れ、燃やしたシラカバのすす、アオダモの煮汁をすり込む伝統技法で実際に施し、アイヌ女性の美意識に理解を深めた。写真展では、その施術の様子を写したものも展示している。
マユンキキさんは「自分の手に施術してみて、アイヌの女として素直に生きることに自信を持てるようになった。シヌイエを伝承しようというのではなく、美しいと思ってもらえれば、それでうれしい」と言う。池田さんも「写真展でアイヌの女性たちが大切にした美に少しでも関心を持ってもらえれば」と話す。
期間中(14、15日は休み)の開催時間は午前10時から午後4時。入場無料。
マユンキキさんは、オーストラリア最大のアートイベント「シドニー・ビエンナーレ2020」(3~9月)にも参加し、白老での写真展などに向けてシヌイエについてアイヌ女性への聞き取りした内容を英語、日本語に書き起こして紹介している。

















