登別マリンパークニクス(登別市)と帯広畜産大学(帯広市)、麻布大学(神奈川県相模原市)の共同研究チームは、治癒が極めて困難とされるペンギンの鳥アスペルギルス症の感染予防法を確立し、日本野生動物医学会誌で発表した。環境中に常在する真菌(かび)を原因にペンギンが呼吸器症を引き起こす鳥アスペルギルス症は、世界中の動物園や水族館で問題になっている。研究チームは今回の成果を「飼育技術の発展につなげたい」としている。
鳥アスペルギルス症は、特にペンギンが感染しやすいとされ、肺炎などを発症して死に至る。治療が難しく、世界中のペンギンの飼育施設は感染対策に頭を悩ませている。
こうした中、登別マリンパークニクスと帯広畜産大、麻布大は2016年度からマリンパークのペンギン飼育施設などで予防法を研究し、成果を上げた。
研究チームは、飼育施設の空気中浮遊菌をエアサンプラーと呼ばれる機器で測定するなどして感染のメカニズムを調査。土を介して感染するリスクが最も高いことが分かったという。
このため、土壌などの消毒や殺菌、ペンギンの足の洗浄などの対策で感染リスクを下げられることを突き止めた。同時に環境サンプリング調査で感染リスクが低い場所も特定できるようになり、効率的に対応することが可能になったという。
鳥アスペルギルス症の原因菌を環境中から完全に消失させることは極めて困難とされているが、研究チームはペンギンと原因菌の接触頻度を下げることで感染を予防する手法を確立。対策によりマリンパークでは16年度以降、発症をゼロに抑え込むことに成功した。
また、チームは予防法のほか、感染の早期発見や早期治療に向けた方法についても研究した。マリンパークで飼育している43羽のペンギンを対象に年4回、血液検査を実施。異常が見られた場合、専門機関が持つ医療検査機器のCT(コンピューター断層撮影装置)で詳しく調べ、発症前の早期治療につなげる成果を上げた。
研究チームのメンバーでマリンパークの獣医師松本直也さんは「研究で得られた成果を生かし、引き続き予防と早期発見に努めていきたい」としている。




















