「研究アイヌに還元されたか」 大川道アイヌ協会理事長 遺骨収集問題の考え語る

「研究アイヌに還元されたか」 大川道アイヌ協会理事長 遺骨収集問題の考え語る
鎮魂式の主催者あいさつで遺骨収集問題を取り上げる北海道アイヌ協会の大川勝理事長

 明治から昭和にかけて国内の国立大学などが道内各地の墓地から持ち去り、ずさんに管理していたアイヌ民族の遺骨。供養のために国が整備し昨年、1500体以上の遺骨が納められた白老町の民族共生象徴空間(ウポポイ)・慰霊施設で14日、北海道アイヌ協会が鎮魂式を行った。6月に就任した大川勝理事長(75)=新ひだか町=は、主催者あいさつで慰霊施設や遺骨収集問題への考えを示し、「各大学は説明責任の誠意ある対応を」と訴えた。あいさつ内容を詳報する。

 この国立の慰霊施設には昨年11月5日から12月3日までの間に、(北大を含む)全国12大学などが保管していた遺骨のうち、地域への返還分を除いた1574体のアイヌ遺骨や副葬品が納められた。最も古い遺骨は、140年前の1879(明治12)年に盗掘され、ドイツの研究機関で保管されていたものだ。今月5日には浦河町関係の36体が加わり、現在1610体が安置されている。ここに眠る先祖の御霊(みたま)に鎮魂の祈りをささげたい。

 7月11日のウポポイ開業記念式典に先立ち、現在首相の菅義偉前官房長官が慰霊施設を視察した。その際、立派な慰霊施設を整備してくれたことへのお礼のほか、これから毎年、国や各大学の協力の下で先祖供養を行い、この施設を次代につないでいく必要性を伝えた。国においては文部科学省、国土交通省、文化庁、内閣官房など各省庁の縦割りを廃し、先住民族政策を推進してほしいと考える。

 大学などによるアイヌ遺骨の収集に関しては、人間の尊厳に関わる問題である。過去の経緯に照らして国は責任を明確にした上で対処すべきだ。各大学はどのような背景や動機の下で遺骨の収集に至ったのか、研究の成果はどのようにアイヌを含めた社会に還元されたのかなど、説明責任が問われ続けられる。誠意ある対応を求めていきたい。

 各大学は、保管していた遺骨を慰霊施設に返還して終わり、というわけにはいかない。責任の下、先祖の踏みにじられた尊厳の回復と、共生社会づくりに主体的に関与すべきだ。遺骨の収集地域に対しても、(大学側の対応などについて)真摯(しんし)に報告されるものと期待している。

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