北海道アイヌ協会(大川勝理事長)は7日、白老町の民族共生象徴空間(ウポポイ)で「第33回アイヌ民族文化祭2020」を開催した。幕末の蝦夷地(北海道)踏査を通じてアイヌ民族と深く交流し、異なる文化を受け入れようとした松浦武四郎(1818~88年)の生きざまを紹介する紙芝居や講演、古式舞踊などのプログラムを通じ多文化共生の意義を発信した。
アイヌ民族への理解促進を目的にした文化祭は毎年、道内各地で開催しているが、今年は白老町で開業したウポポイを会場に設定。北海道の名付け親として知られる松浦武四郎とアイヌ民族の関わりを伝えるプログラムを企画した。
交流体験ホールでの開会式で大川理事長が「先住民族アイヌの歴史や文化への理解を深めてもらえれば」とあいさつした後、紙芝居師・三橋とら氏=東京都在住=が「紙芝居・武四郎物語」を上演。幕末の蝦夷地踏査を通じアイヌ民族の暮らしや文化、場所請負制度下で強いられた過酷な労働の様子などを克明に記録し、書物で広く伝えた武四郎の生涯を紙芝居に仕立てて紹介した。
引き続き、白老民族芸能保存会、平取アイヌ文化保存会、帯広カムイトウウポポ保存会がステージで古式舞踊を上演。イヨマンテリムセ(熊の霊送りの踊り)、アンナホーレ(鳥の踊り)、フントリフンチカプ(ワタリガラスの踊り)など各地で伝承され、国の重要無形民俗文化財に指定されている古式舞踊を披露した。この中で帯広の保存会は、バッタの大群に襲われて作物被害に遭った道東地方の出来事を表現したバッタキウポポも紹介。約300人の来場者は、アイヌ古式舞踊の多様性に理解を深めた。
踊りを鑑賞した白老町の平田英雄さん(70)は「アイヌ文化の奥深さに感銘を受けました」と話した。
この後、国立アイヌ民族博物館の交流室で、北海道博物館の三浦泰之学芸主幹が「3つのキーワードでひもとく松浦武四郎の生涯と人物像」と題して講演。「見る」「集める」「伝える」のキーワードを基に、幕末の蝦夷地やアイヌ民族に関する情報を精力的に集め、共生の重要性を訴えた武四郎の生涯について解説した。また、札幌医科大学客員教授の大島直行氏が「アイヌ文化と縄文文化の関係を考える」をテーマに話した。




















