2018年9月に発生した胆振東部地震で旧生徒寮が被災し、再建を目指していた鵡川高校野球部の新生徒寮が間もなく完成し、野球部員たちは年明けから新しい場所での生活をスタートさせる。部員は年末年始に合わせて実家に帰省するため、現在暮らしている仮設寮での生活は22日が最後。3年生にとっては1年時から約2年間を過ごした思い出深い寮だ。「なくなるのは寂しいけれど、新しい寮ができるのはありがたい」と2人の副主将が口をそろえた。
2年前の震災で震度6の揺れに見舞われ、旧生徒寮は基礎部分の損壊など「半壊」の判定を受けた。その後、生涯学習センター「報徳館」での避難生活を経て、翌年の1月に移動可能なモバイルハウスを連結させた仮設寮に入った。3年生の佐藤翼副主将(18)は「1人部屋で話し相手はいなかったが、個人の時間が取れたし、暮らしていて何の不自由もなかった。町に支えられているなと実感できた」と話す。
特に寒い冬は、トレーニングが終わると3年生10人で寮まで歩いて帰ってきた。西村天辰副主将(18)=3年=は「練習はきついけれど、帰ってきた時の寮は暖かかった」と振り返る。避難所生活も共にしたことから仲間意識、結束力はどのチームにも負けない自負がある。「どんな高校よりも野球ができるありがたさを感じることができた」。胸を張って言う。
思い出を胸に次のステップへと踏み出す。佐藤副主将は高校で野球に一区切りを付け、かねて夢だった作業療法士になるための大学に進む。「この寮で苦しいことも最後までやり遂げる力を養った。ボランティア活動を通じて高齢者の方とも関わったし、『頑張ってくれ』と声を掛けてもらった。今度は自分が支えたい」
西村副主将は千葉県にある大学に進学し、野球を続ける。「大学で全国大会出場を達成したいし、他の地方でも大雨や台風の被害に遭っている人がいる。自分の経験を共有し合って大学や周りの人に伝えていきたい」と考えている。

















